睡眠時無呼吸症候群の患者が夢見る夜の快適な睡眠、まもなく手の届くところに

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著:Eric Kezirian南カリフォルニア大学、Professor of Otolaryngology)

 睡眠時無呼吸症候群に悩む多くの人は、なかなか夜の安眠を味わえない。閉塞性睡眠時無呼吸を患っている人は睡眠中に呼吸が止まってしまうため、いびき、睡眠障害、眠気や疲労といった症状の出ることがよくある。場合によっては、高血圧、心疾患や脳卒中など深刻な健康問題を引き起こすこともある。

 アメリカには睡眠時無呼吸症候群の成人患者数が約1,800万人、世界では10億人いるとみられている。気道を開存させておくことで息ができるようにする「持続的気道陽圧法(CPAP)」は、多くの患者にとって有効な治療法となっている。

 しかし、CPAP療法を受け入れられない約3分の1の患者は、外科的手術や歯科装具など別の治療法を検討することになる。軟口蓋(のどちんこ)や舌などの部位を一部切除もしくは移動させることで呼吸する空間を広げる外科的手術には、さまざまな方法がある。手術の経過が良好な患者も多くいるが、とても万能とはいえない。

 睡眠医療の外科医、耳鼻咽喉学、頭頸部手術の教授として、私は閉塞性睡眠時無呼吸といびきに関する診察と外科的治療に力を入れてきた。これまでの研究では、外科的治療で効果の出る患者とそうでない患者がいる理由、外科的治療でうまくいかなかった患者が他の治療法も受け入れられない理由について検証してきた。

◆呼吸と健康をむしばむ
 無呼吸が引き起こす危険は睡眠不足にとどまらない。症状を抱え、なかなか安心できない患者にとっては重要な問題だ。

 CPAP療法では多くの患者で効果がみられたものの、効果のみられなかった患者も同じくらいいる。場合によっては、外科的治療や歯科装具が検討される。

 歯科装具(マウスピース)では、下あごを前方に出すようにすることで呼吸する空間を広げることが多く、効果がみられる場合がある。しかし、マウスピースをしながらだと安眠できない患者の場合、治療効果はまったく得られない。実際、そのようなケースはよくある。

 その場合は外科的治療が検討されるが、細胞を切除もしくは移動させることが多いこの治療を実施しても、必ずしも経過が良好だったわけではない。

 舌に刺激を与えるため外科的に植込みをする器具については、2011年以降、その有効性が明らかにされている。

 睡眠時無呼吸患者の約3分の2で効果がみられたとする研究をもとに、アメリカ食品医薬品局(FDA)は2014年、この医療器具を承認した。

 南カリフォルニア大学ケック医科大学などの機関では、会社からの助成を受けた研究において、「上気道刺激装置」と呼ばれるこの医療器具を活用し、睡眠時無呼吸患者のデータを収集している。上気道刺激装置は、手術中に体内に植込まれる。この器具は舌の動きを制御する神経に刺激を与える働きをして、舌は喉で呼吸ができる空間を広げるような動きをすることになる。

◆有望な体内植込み機器
 我々は最近、術後の経過が良くない80人の患者を含む約300人の患者データを検証した。閉塞性睡眠時無呼吸の術後の経過は二段階で判断するのが一般的である。睡眠時無呼吸の程度が少なくとも半減すること、および睡眠時無呼吸がまったくないか、軽微であるかということだ。1時間のうちに何回呼吸が遮られたかを示す「無呼吸低呼吸指数」とよばれる指標を使って計測を行う。

 研究の結果、閉塞性睡眠時無呼吸に対する手術の有無に関わらず、患者の経過には明確な違いがみられなかったことが明らかになった。医師の間では、一つの外科的治療でうまくいかなかった患者は他の治療法の経過も良好でないとみられているようだが、我々の研究では、患者全体としてみるとそうではないことが明らかになった。

 経過の良し悪しをみるのに、特定のタイプの患者についても検証を行った。肥満の徴候がみられない肥満度指数(BMI)が29.1kg/m2未満の患者の場合、治療の成功可能性が低下することが示された。この結果は、手術をしたことのない患者の成功率が80~90%と比較的高い一方で、以前に手術がうまくいかなかった患者も他の患者と同程度の成功率だったことと関係しているようだ。今後の研究では、さらに多くの患者を対象とした場合でも明らかな知見が得られるかという問題を検証していきたい。

 閉塞性睡眠時無呼吸で悩む患者を治療する者の一人として、外科的手術はしたものの依然として症状が続き、他の治療法を検討している患者を多くみてきた。研究の結果、睡眠時の無呼吸を改善する新たな治療法を検討していくだけの価値のあることが明らかになった。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac

The Conversation

Text by The Conversation

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