マルクスは不本意? 自身の墓に監視カメラ 相次ぐ破壊で対応

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◆セレブ墓地で一番人気 移設後に訪問者増加
 ハイゲイト墓地には5万3000の墓があり、17万人が眠っている。マルクスだけでなく、ビクトリア朝を代表する作家のジョージ・エリオット、歌手のジョージ・マイケル、化学者・物理学者のマイケル・ファラデーなど著名人の墓が並んでいる。ガーディアン紙によれば、マルクスの墓がある東墓地なら2万ポンド(約285万円)、ジョージ・マイケルの墓がある西墓地ならその倍はする高級墓地ということだ。ちなみにアトランティック誌によれば、マルクスが購入したときには現在の価格で5ドル(約550円)ほどだったということだ。

 墓地を管理するチャリティ団体、Friends of Highgate Cemetery Trustのイアン・ダンガベル氏によれば、毎年10万人の来場者があり、多くがマルクスの墓を見るためにやってくるという(NYT)。同墓地のホームページによれば、もともとマルクスは墓地内の歩行者通路にあった妻の墓に埋葬されていた。しかし1956年に社会主義者の彫刻家、ローレンス・ブラッドショーによる胸像を加えた新しい墓碑が作られ、より目立つ場所に移設されたという。これを機に、訪れる人が増えたということだ。

◆主義に反する? 意図せぬ商業主義への貢献
 ウェストミンスター大学のジーン・シートン教授は、反個人主義で、社会全体の利益のために個を犠牲にする集団主義アイデアの偉大な創設者だったマルクスが、こんなに自身を守らなければならないのは逆説的だと述べ、墓の監視カメラにある矛盾をNYTに説明する。

 実はハイゲート墓地では、東墓地への訪問者には大人4ポンド(約570円)の入場料を課しており、大切な収入源となっている。マルクスの墓碑には「万国の労働者よ、団結せよ」という彼の書物のなかの最も有名な一節が刻まれているが、アトランティック誌は、労働者が墓の周りに集合しようとすれば、彼らの資本の一部を入場料として手放すことになると指摘する。マルクスは私有財産廃止を唱えていただけに、自分の墓が資本主義者の金儲けの道具になるとは思いもしなかっただろう。カメラ同様、墓の下で眠るマルクスにとっては頭の痛い問題のようだ。

Text by 山川 真智子