「日本に行っても大丈夫か?」海外で懸念高まる 英メディアは冷静な反応

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♦︎観光業に打撃
 コロナウイルスは日本の観光業に打撃を与えている。iニュースは日本と中国本土とを結ぶ空の便に欠航が出ていると報じ、イギリスから訪日予定の旅行者に対し、最新の運行状況を確認するよう勧めている。

 とくに客足が遠のいているのは、日本の観光の中心地の一つである京都だ。テレグラフ紙は閑散とした京都の象徴として、普段は人でごった返す嵐山地区の「竹林の小径」に人影が見られないことを挙げる。同紙は「嵐山の竹林などの不気味なほど静かな場所は(中略)このコロナウイルスが日本にもたらしている影響を説明するのに十分だ」と述べている。国際民間航空機関の試算によると、日本の観光業が新型コロナウイルスによって被る損失は1月から3月だけで12.9億ドル(約1440億円)に上る。苦境を逆手に取るように地元商店街は「スイてます嵐山」キャンペーンを打ち出すなど、観光客数の回復に懸命だ。

 気になるのは夏のオリンピックへの影響だ。同紙は東京マラソンの一般参加中止後、東京オリンピックへの影響が懸念されるようになったと報じている。IOCは延期の可能性なしと明言しているものの、厚労省所轄の独立行政法人である地域医療機能推進機構は、「(新型コロナ)ウイルスがオリンピックの時期までに収束するかについては、予測が困難である」との見解を述べている。さらに、「中止の可能性も含め、夏の大会についていかなる混乱があるかについては、今後数ヶ月でウイルスが突然変異をするか、するとすればどう変異するか、そして爆発的感染を封じ込めるための国際社会による努力の効果に影響されるだろう」とも付け加えた。

♦︎イギリスでは比較的冷静
 新型ウイルスはイギリスでも個人レベルの不安を招いているが、英政府として日本旅行を延期するような勧告には至っていない。iニュースでは日本側の入国管理局の検疫が強化されており、過去14日間に武漢市の滞在歴を持つ人、および中国・湖北省発行のパスポートを所持する人の日本への入国が原則として許可されないと報じている。これを受けて英外務省は、日本当局の検疫の強化に従うようイギリス人旅行者に呼びかけている。

 実際に日本を訪れたテレグラフ紙の記者は、さほど危機感を覚えなかったようだ。「日本では集団として互いへの配慮がとても行き届いているため、もしコロナウイルスの感染の顕著な流行がこの単一の国家で起きたとしても、人々の遠慮ない接触とくしゃみを浴びながら働くロンドンでよりもおそらく安全だと感じるでしょう」と述べている。感染者が多く出ていない時期にもかかわらず、日本では多くの人々がマスクを着用しており、地方のホテルでさえコロナウイルスに関する情報を書面で提供するなど、「ウイルスへの対応は信じられないほど手際が良い」という。

 大衆紙も比較的冷静な見方をしているようだ。英サン紙(2月7日)は「(外務英連邦省は)日本への旅行を避けるよう勧告はしていない」「米国務省は日本に関する渡航危険情報を何ら発表していない」と述べ、現時点で日本への旅行を自粛するような公式なメッセージは発信されていないとしている。

 日本旅行を計画中のイギリス人旅行客にとってもウイルスの状況は気にかかるところだが、現時点ではさほど悲観的な見方は出ていないようだ。

Text by 青葉やまと