船内隔離は適切だったのか? 感染急増で方針を変えたアメリカ クルーズ船の新型肺炎

Jae C. Hong / AP Photo

◆船内隔離は間違い? 増え続ける感染者
 アメリカ大使館は、自国民を退避させる理由として、乗客と乗員がウイルスに感染する高いリスクがあるためと述べている(AP)。そもそもすでに下船した乗客の一人が感染していたため全員隔離措置が取られたのだが、検査のたびに数十人単位で感染者が見つかり、2月16日時点で355人に達している。

 テキサス州ベイラー医大のピーター・ホテズ氏は、今回の隔離は感染者に対する14世紀のアプローチと倫理だとし、船の中に留めておく理由がわからないと述べている。突然の米政府の方針転換は、日本のやり方の有効性を信頼できなくなったためだと見る人もいるという。実は乗組員には隔離措置は行われておらず、マスクなしで食事をともにし、互いに並んで仕事をしてきたという事実もわかっていたということだ(CNN)。

 香港のスタンレー・ホー研究所のデビッド・シュー・チョン・フイ氏も、乗客乗員は宿泊施設で隔離するのが理想だとし、ダイアモンド・プリンセス号内で起こっているのは、通常考えられる以上の2次感染を引き起こすイベントだと批判している(サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙)。

 メルボルン大学のクマール・ヴィスヴァナタン氏は、乗客を客室に隔離することはある程度効果的だが、できる限り用心した状況でも感染が起こっているようだと述べる。クルーズ船や客室自体が隔離を前提に作られていないし、感染を阻止できるかどうかは、咳のエチケットや手洗いの徹底など個々の努力によるところが大きいからということだ(同上)。

 もっとも、政府としては一般大衆と乗船者の両方の健康を考慮する必要があり、どうすれば正しかったのかという答えを出すのは難しいと同氏は指摘する。日本政府は、日本国内への感染阻止が最重要と考え、船内隔離が最もよい方法と判断したのだろうと述べている。最初から全員検査をすべきだったという批判もあるが、WHO(世界保健機構)は、発症した人に適切な治療を受けさせるという、感染拡大時における最重要の責務を果たしているとして、日本の対応を擁護している(同上)。

◆各国救出へ 残された人々に不安
 チャーター機に乗るため下船したアメリカ人は340人だったが、クルーズ船に残った人々もいた。米政府はすでに発症している人は搭乗させないとしたが、検査はしていない。よって、感染の可能性のある人と同じ飛行機に乗ることをいやがる人々がいた。また、家族が感染し日本の病院にいるため、先に帰ることを拒んだ人もいたという(CNN)。

 アメリカの動きを受け、カナダや香港、イタリアなども自国民の救出に向けて動き出しているが、対応を決めていない国の乗客の心情は複雑だ。ガーディアン紙によれば、ソーシャルメディアで船内の状況を発信してきたイギリス人乗客のデビッド・アベル氏は、自国の政府に幻滅したと述べている。船内から英政府や富豪のリチャード・ブランソン氏にまで救出を求めたが助けは来ず、イギリス人には見切りをつけたと愚痴っている。船内には1000人以上の日本人乗客も残っており、こちらの健康状態も心配だ。

Text by 山川 真智子

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