春節、中国人大移動開始 懸念される新型肺炎の拡大

Chinatopix via AP

◆始まる大移動、中国政府も警戒
 1月24日から30日までの春節を利用し、多くの中国人が故郷への帰省旅行や、国内外への観光旅行に出かける。中国最大の旅行プラットフォーム、Ctrip.comは感染拡大前に、国内だけでも春節期間中に約4億5000万件(昨年比8.4%増)の旅行があると推計していた(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)。

 当然混雑した列車や航空機での感染が懸念されており、旅行を取りやめる人も出ているという。2002年末から2003年にかけて中国で拡大し、本土と香港で約800人の死者を出したSARS(重症急性呼吸器症候群)の記憶がよみがえる人も多いようだ(同上)。

 春節の旅行シーズンを控え、中国の習近平主席は、予防と爆発的感染のコントロールが重要だと述べた。患者の治療、感染と拡大の原因の特定、モニタリングの強化、標準治療法の確立に最大限の努力をするよう指示を出したということだ。さらに習主席は、情報はタイムリーに公開されるべきとし、国際協力の重要性を強調している(LAT)。

 アントワープ大学病院の臨床病理学のディレクター、ヘルマン・グーセンス氏は、過去のパンデミックと比べ、今回の国際的な反応は「非常に迅速」だと強調する。中国政府が早めに情報を提供し、経過がわかっていることが幸いしており、診断検査も開発され、治療計画についてもすでに議論されているとユーロニュースに話す。普段は情報統制や隠ぺいを批判される中国だが、今回の対応に関しては評価が高いようだ。

◆水際で防げるか? 各地の空港も対策強化
 多くの中国人旅行者を迎え入れる世界の空港でも警戒が強まっている。LATによれば、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ジョン・F・ケネディ国際空港では、武漢から到着する旅行者には問診票の記入、体温チェックを含むスクリーニングを行っており、あわせて100人ほどのスタッフを追加して、対応に当たっているという。シンガポールでは、中国からの旅行者には発熱のスクリーニングを行っており、オーストラリアのシドニーでも、武漢からの乗客には、国境警備、バイオセキュリティの担当スタッフによるチェックが行われるという(ユーロニュース)。

 WSJによれば、中国経済の減速で、今年は海外旅行でも遠出をする中国人は減り、ほとんどがアジアに向かうということだ。旅行業界サイト『トラベル・デイリー・メディア』によれば、人気の旅先はタイ、日本、シンガポールの順になっており、日本でも検査体制の強化が求められる。

Text by 山川 真智子