来てくれていいけど……ヘンリー王子夫妻の移住、カナダ国民の本音は?

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◆王室とカナダの関係が変わる 地元紙大批判
 G&Mは、カナダ人は王室好きで、王族の訪問を熱烈に歓迎すると述べる。しかし王族がカナダ国内に住むことは、カナダと王室の関係の長きにわたる特質と調和しないとし、ヘンリー王子夫妻がカナダに居を構えることに反対する。

 同紙は、もし夫妻が一般人であれば何の問題もないが、王位継承権6位というれっきとした王族であるヘンリー王子がカナダに住むことは、暗黙の憲法上のタブーを犯すことになり、許されないとする。

 カナダはイギリス連邦加盟国で、エリザベス女王は正式なカナダ国王だ。国家元首である女王の代わりにカナダ総督が任命され、国家元首としての職務を遂行する。とはいえこれは形式的、名目的なもので、カナダ政府は完全にイギリス政府から独立している。

 G&Mは、カナダにはイギリスのように継承される特権階級を持つ階級制度はなく、カナダ総督も1950年代からずっとカナダ人だと述べる。王族は常に海の向こうに住む人々であり、バーチャル王政の単なる一時的アバターだと解説。何の任務も持たない王子を海の向こうからカナダに運んでくることはできないし、カナダは王族でありながらイギリスを脱出したい人のための中途半端な家ではないと主張している。

◆王族でも移民ビザが必要 待遇はどうなる?
 英デイリー・メール紙によれば、ヘンリー王子夫妻のイギリスの住まいではスタッフが異動になっており、このまま二人はイギリスに戻ることはないのではないかと噂されているという。夫妻がカナダに永住することを選ぶなら、通常の移民のための手続きを踏まなくてはならない。トロントの移民弁護士によれば、ヘンリー王子は35歳で大卒でもないため、手続きには不利になると見ている。一方メーガン妃は大卒で女優時代のドラマの仕事でトロントに数年滞在していたため、自営業での申請ができる可能性が高いという。ヘンリー王子と息子のアーチーちゃんは配偶者と子供として家族ビザを申請できるだろうということだ(ガーディアン紙)。

 ガーディアン紙によれば、カナダのメディアでは、二人を「スキルのない外国人」と茶化し、ヘンリー王子がテープカットや握手のような儀礼的仕事を、勤勉なカナダ人から奪うかもしれないというジョークも出ているという。

 前出の世論調査によれば、女王、ウィリアム王子、チャールズ皇太子の場合、それぞれ72%、66%、60%の回答者が王政を代表する実働メンバーと捉えているが、ヘンリー王子の場合は47%が有名人と捉えており、王室実働メンバーと回答したのは41%だった。歴史家のジョン・フレーザー氏は、ヘンリー王子夫妻はつまるところスポットライトから逃げ出したいセレブだとドライな見解を示しているが、一般のカナダ人も同様に感じているようだ。

Text by 山川 真智子