「ソフトパワー30」、日本8位 トランプ・アメリカは今年も後退
◆日本8位、大型イベント招致のビッグイヤーに期待
日本は昨年の5位から8位に順位を下げた。それでもかなりの国際的影響力があると評価されている。アジアの国で上位10ヶ国に入ったのは日本のみだ。今年貢献したのは文化と外交的取り組みだとされている。2019年にはG20サミットとラグビーワールドカップ、2020年には東京オリンピック、パラリンピックが開催され、ソフトパワーを増強する機会になると見られている。
一方、政府への信頼と男女同権のスコアが低かったことが政府のカテゴリーでランクを下げた。日本政府は、すべての国民が尊重される社会づくりのため、国民からの意見を聴取し、信頼を強化することもできるのではないかと報告書は提言している。さらに、国内的な政治的思惑と、外から見た日本に対する世界的認識の間の問題もうまく対処しなければならないとし、その例として商業捕鯨の再開を上げた。令和という新時代が、変化のきっかけとしてタイムリーではないかとしている。
◆アメリカ下げ止まらず 国際秩序の危機
2016年にはトップだったアメリカは、毎年順位を下げ、今年は5位となった。報告書は、ルールに基づく国際秩序が危機にあることが、2018年から大きな議論となったと指摘。世界秩序の低下を招いた要因はいくつかあるとはいえ、最も予想外だったのは、アメリカの外交政策の過激なシフトだと述べている。
安全保障では他国との同盟関係に疑問符をつけ、貿易では親しい国にまで戦争を仕掛ける。多国間協力を嫌がり、2国間や孤立に向かったアメリカに対し世界の抱く印象は変わってしまった。アメリカはいまでも文化、教育、デジタルでは世界をリードするが、現在の政府が、国内外でのアメリカの評価を落としてしまっていると報告書は述べている。
◆元凶はトランプ氏? 政府以外で挽回を
ロイターのBreakingviewsの記事は、今回のランキングでアメリカは敗者であるとし、ランク低下の原因は「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領で、そのゼロサムの世界観も一因だと断じる。もっとも大統領の任期は最長8年であり、アメリカの個人の自由や法制度はいまでも世界の羨望の的であるため、磨きをかけることでアメリカのソフトパワーは生き伸びるとしている。
ソフトパワー30の報告書は、トランプ大統領がソフトパワーにほとんど興味を持っていないことがわかったので、連邦政府レベルの役割を果たせる市長や知事などにがんばってもらおうと提案している。また、企業、大学、市民社会にも奮起してもらい、アメリカが世界の仲間に提供できるものがまだまだたくさんあることを示してほしいとしている。
アラブ首長国連邦のナショナル紙に寄稿したイギリスの元大使で、ニューヨーク大学アブダビ校の客員教授、トム・フレッチャー氏は、アメリカに限らず、保護主義が高まるいま、政府の政策としてのソフトパワーに後退はあると見る。しかし最も効果的なソフトパワーは市民が下から作り上げるものだとし、イギリス政府がビートルズに「レット・イット・ビー」を書かせたわけではなく、スウェーデン政府がグレタ・トゥーンベリさんを環境活動家にさせたわけでもないと説明する。市民自体が芸術、音楽、そして工夫を創造すれば、それによって人々がより近くなれると述べ、バラバラになりつつある世界を、ソフトパワーがつなぎとめることを期待している。
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