暴動・デモだけではない、香港のもう一つの顔 現地に行って見えたもの

炮台山駅前のデモ参加者

◆正反対の二つの顔を持つ香港
 しかし、だからとって安全だと言っているわけではない。現在、香港はまったく異なる二つの側面を抱えている。そのもう一面はメディアで報じられている香港の姿だ。香港滞在4日目の8月28日の夜、反政府デモで香港警察による性暴力が多発していることに抗議する3万人規模の抗議集会が行われたが、その後、筆者は偶然にも地下鉄構内で抗議集会から帰る若者のグループに遭遇した。若者たちは一般客と揉み合いになることはなかったが、地下鉄の車内で威勢のよい大きな声で一斉に騒ぐなど、まるで警官隊と衝突するあのデモ隊を見ているかのようだった。

 また、炮台山駅近くでは、「Democracy for Hong Kong」や「五大訴求」などと書かれた黒い垂れ幕を見つけた。それらは北京に要求を突きつけたものだが、平日では週末のような大きな事態は発生していないものの、香港人の強いアイデンティティや北京への抵抗といった雰囲気は平日でも十分に感じられた。平日の治安が落ち着いていることを考えると、香港の若者たちは平日に充電し、週末になるとそれを一気に爆発させているのかもしれない。

炮台山駅近くに掲げられた中国への要求を示した黒い垂れ幕

 以上のことは、あくまでも筆者が8月25日から1週間滞在した期間で感じたことだ。すでに8月31日以降、事態は再び悪化しているようにも思う。直近のポイントとしては、9月11日か12日に香港で開催される一帯一路サミットだろう。今後の動向が懸念される。

Text by 和田大樹