暴動・デモだけではない、香港のもう一つの顔 現地に行って見えたもの

炮台山駅前のデモ参加者

 今年6月以降、連日香港の情勢が報道されている。道路や空港を占拠するデモ隊、地下鉄駅内で容赦なく人を叩き続ける香港警察、香港との境界にある深圳に押し寄せる人民解放軍、日本で報道されるのはこういったシーンで占められ、それによって香港を訪れる日本人の数は減少し、旅行業界などは大きな悲鳴をあげている。香港情勢への懸念が広がるなか、筆者は8月下旬から約1週間香港を訪れ、そこで報道されないさまざまな現実を目撃した。

◆暴動やデモとは正反対の香港
 まず、直面した現実として、暴動やデモとは正反対の香港の姿だ。筆者は、8月25日から香港のショッピング街「コーズウェイベイ(銅鑼湾)」から東へ2駅の炮台山(フォートレスヒル)駅近くのホテルに滞在し、そこを拠点にさまざまな街を歩いた。

 デモや暴動が発生するのは、金鐘(アドミラルティ)や中環(セントラル)、尖沙咀(チムサーチョイ)、旺角(モンコック)、太子(プリンスエドワード)などの繁華街であるが、滞在中、そこらを歩き回ってもデモ関係者に遭遇することはほぼなかった。平日ということもあったが、日本のテレビで報道されるようなシーンはほぼなく、日常生活を営む香港人の本来の姿がそこにはあった。

 香港の犯罪率は東京よりも低いという数字もあるように、現地の治安はきわめて良く、平日の都心部を歩いたとしても危険はさほど感じられない。平日においては、香港空港と都心を繋ぐエアポートエクスプレス、地下鉄やトラム、バスなどの公共交通機関は通常どおりの運行で、お店も通常どおり開いており、コーズウェイベイにある「そごう」では楽しそうに買い物をする香港人の姿があった。

 また、8月にデモ隊による占拠によって多くのフライトが欠航になった香港国際空港では、パスポートと航空券を持った搭乗客以外、ターミナルの中に入れなくなっており、空港内の治安は落ち着きを取り戻していた。同空港到着後、エアポートエクスプレスに乗って都心に向かうときもきわめてスムーズだった。日本のメディアや新聞で報じられるようなシーンはきわめて局地的なものだといえるだろう。

搭乗者以外の立ち入りを禁止する案内(香港国際空港)

Text by 和田大樹