「安全の保証ない」帰れないロヒンギャ難民 帰還事業への希望者なし

AP Photo / Manish Swarup

 8月22日に予定されていた数千人のイスラム教徒少数民族ロヒンギャの帰還は、実現困難な情勢だ。対象者が国連難民機関とバングラデシュ政府に語ったところによると、市民権と安全が確保されない限りミャンマーには戻りたくないという。

「帰還を受け入れてくれた難民は皆無だが、あらゆる準備は整っている」と難民、救済復興機関高等弁務官事務所高官のカレド・ホッセイン氏は話す。

 22日に予定されていた帰還を前にして、少なくともイスラム教徒ロヒンギャの221世帯が20、21日に面談を受けた。バングラデシュのシェイク・ハシナ首相は、帰還は強制ではなく、同意が得られた場合のみ実施されると述べている。

 ミャンマー政府は、バングラデシュのコックスバザール地区に住む1,056世帯、3,450人の難民を帰還対象として認定した。同地区では、約100万人のロヒンギャが避難生活を送っている。
 
 ミャンマー軍事政権は、反逆的行為への対抗措置として、2017年8月にイスラム教徒ロヒンギャへの苛烈をきわめる鎮圧作戦を展開した。70万人以上のロヒンギャが、婦女暴行、殺人、自宅放火などを含む「民族浄化作戦」と呼ばれる惨劇から逃れた。
 
 国連難民機関は「帰還につながる状況を作るために関係各国の政府と協力しており、人々が自主的に帰還しようとするかどうかをみている。難民が自主的に帰還することが我々の基本姿勢だ」と、ニューヨークにある国連本部のステファン・デュジャリック報道官は述べている。

 前難民高等弁務官で現事務総長のアントニオ・グテーレス氏は、難民が帰還を判断するのに必要な情報があることが重要だと強調している。

 昨年11月にも帰還の動きがあったが、誰も帰国しようとせず実現には至らなかった。数千人もの難民が「我々は帰りたくない」「我々が求めるのは正義」などと叫んで抗議したため、当局は帰還手続きを中止せざるを得なかった。

 今回は、22日の計画を前にして大がかりな抗議活動は見られず、避難所は落ち着いていた。バングラデシュのアブル・カラム難民高等弁務官は、この状況に満足していた。

「明るい兆候であり、良い進展がみられる。昨年は帰還予定日が近づくにつれて難民たちは避難所住宅から逃げてしまったが、今回はここにやって来て、率直に話してくれる。難民たちは私たちを信頼している」

 帰還者リストに掲載されていた難民の1人、カリム・ウラー氏によると、家族ともども帰国したいが、ミャンマーは市民権と安全を保証すべきだと話している。ミャンマー政府ではなく、国連の監視下で帰国したいと多くの人が思っている。

「家に帰りたい。バングラデシュは祖国ではない。しかし拷問を受けず、殺害もされない保証はまだ確保されていない」とウラー氏は訴えている。

 ミャンマー政府は長らくロヒンギャに市民権を認めてこなかったため、彼らは無国籍となった。また、公認の差別行為を受けてきた。

 国連が昨年実施した調査では、大量殺人、戦争犯罪、ロヒンギャ取り締まりにおける非人道的犯罪の容疑でミャンマーの軍最高司令官を起訴すべきとしていた。ミャンマー政府はこの報告書と、軍による不正行為に関する指摘を否定している。

By TOFAYEL AHMAD and JULHAS ALAM Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP