チェルノブイリに生きる犬たち……殺処分を免れたペットの子孫のいま

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◆生き残った犬の子孫たち、立ち入り禁止区域にコミュニティ
 しかしペットだった犬たちのなかには殺戮を免れたものもおり、その子孫が人の消えた立ち入り禁止区域で生活している。自然淘汰の働きで、ここにいる犬たちは概して大型でたくましい。また垂れ耳で、白、黒、茶色のまだらの毛を持つ雑種犬が目立つという。なかには、野生の狼の血をひくものもいるということだ。ウクライナの厳しい冬の寒さや同じ地域に住む肉食動物などの外敵のため、6歳まで生きる犬はほんのわずかしかいないとされる(ビジネス・インサイダー誌)。

 彼らを助けるために、欧米のボランティア団体が立ち入り禁止区域に入り、捕獲を始めている。団体の一つ「Clean Futures Fund」の推定では、数百匹がコミュニティを形成していると見られる(MEAWW)。

 BBCは捕獲の様子をビデオで伝えている。まずうろつく犬を見つけると、係員が麻酔を仕込んだ吹き矢やダーツで狙い撃ちする。眠った犬たちは獣医師の元に連れていかれ、被爆の度合いを調べるため検査を受ける。その後体についた放射性物質を落とすため洗浄し、去勢、ワクチン接種などの処置を受ける。

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 放射線量を測定すると、高い値を示す犬も多いが、BBCの取材に答えた医師は、犬たちの内部被ばくはほとんどないと述べている。現地で活動する、動物虐待防止協会(SPCA)のロリ・カレフ氏は、立ち入り禁止区域の地表はいまでも放射性物質に覆われており、そこで歩いたり寝たりする犬たちの体に自然に放射性物質がついてしまうと説明する。多くの場合は、毛に付着した放射性物質を洗い落とせば、安全なレベルに下がるとMEAWWに話している。

Text by 山川 真智子