増え続ける難民・避難民、7000万人を突破 国連報告書

AP Photo / Ariana Cubillos

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は6月19日、世界各地で7,100万人が、紛争や迫害、暴力のために住む場所を追われていると発表した。前年より200万人以上増加し、その総数は国別の世界人口順位第20位に匹敵する。

 UNHCRが毎年発表する報告書「グローバル・トレンド」によって、2018年末時点での世界各国の難民と難民申請者、国内避難民の統計が示された。数十年もの間、祖国を離れて暮らす場合もあるという。

「世界難民の日」の6月20日を前に報告されたこの統計により、とくに移民や難民の受け入れに難色を示すアメリカなど各国の対応を含め、国際法や人権問題、国内政情をめぐる議論に一石が投じられることは必至である。

 報告では、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官がトランプ大統領と各国の指導者らに対し、移民や難民が受け入れ国の雇用保証や安全保障を脅かすものだと表現することは「悪意」を伴うものだとするメッセージを伝えている。彼らは大抵の場合、恐怖や危険そのものから逃れているのだと述べている。

 また、統計的な概説に加え、心が締めつけられるような体験談が紹介されている。それは、政治的抑圧やギャングによる殺害、性的虐待、民兵による殺戮、家庭内暴力などから逃れるため、川を渡り、砂漠や海、フェンスなどの障壁を越え、人為的また自然による壁を潜り抜けて生き抜いてきた人々の話である。

 UNHCRの報告によると、2018年末時点で、7,080万人が強制的に住む場所を追われている。その数は前年の6,850万人よりも多く、この10年で65%近く増加した。その中でも5人中3人は国内で避難民となっており、その数は4,100万人以上だとされる。

「またしても遺憾なことながら、世界の動向は間違っているというべき方向に向かっている。新たな対立が生まれ、新たな情勢の中、難民が新しく生み出されている。すでに難民となっている人々の状況が改善されることはなく、難民の数はただ増えている」と、グランディ高等弁務官はジュネーブで報道陣に話している。

 この現象をめぐる規模は拡大し、また長期化している。「強制的に住む場所を追われている」人々の5人中4人は、5年以上状況に変わりがないという。例えば、8年間に及んだシリア内戦後、住む場所を強制的に追われる人の数は今もなお増え続け、およそ1,300万人にのぼる。

 ハイパーインフレと政情混乱に陥っている祖国ベネズエラから逃れようとする難民申請者数は34万件を超え、2018年に過去最多となった。同年の世界各地での総申請者数の20%以上を占める。難民認定の申請中は国際的支援の対象となる。

 UNHCRはこの数字を「控えめ」なものだとし、ベネズエラ政府は長期的な傾向になりそうな可能性を隠蔽しているとコメントしている。

 ここ数年間で、この南米の国から400万人超が流出したことが報告されている。多くはペルーやコロンビア、ブラジルへと自由に移動し、正式に国際的支援を求めているのはわずか8人に1人程度だ。国外への流出が今後も続き、受け入れ国に過大な負担がかかることが懸念されている。

 グランディ高等弁務官は、ベネズエラからの「国外流出者」は今後も続くと予測し、周辺国への開発援助に注力するよう、支援者らに訴えている。

「さもなければ、これらの国々はこれ以上の負担を抱えることはしないだろう。そして、最終的に難民を傷つけるような手段を取らざるを得なくなる。我々は実に危機的な状況にあるのだ」と、グランディ高等弁務官は語る。

 一方で、アメリカは依然として、世界の中でも「最も難民に支援の手を差し伸べている」国であると、グランディ高等弁務官は会見で述べている。UNHCRに対するアメリカからの支援は傑出している。アメリカ国内で難民や難民申請者への支援活動を行っている、地域コミュニティや支援団体についても、その功績を評価している。

 ただし、アメリカで保留にされている難民申請の数は、71万9,000件近くあり、世界最多である。長期間放置されている行政上の欠陥があるとグランディ高等弁務官は指摘する。昨年、新たに25万件以上が追加された。

 また、移民や難民を敵視するような最近の発言についても公然と批判している。

「実はヨーロッパや他の地域でも同様なのだが、アメリカにおいて私たちが目の当たりにしていることは、人々が難民や移民を、『雇用を奪いにやって来た連中であり、自分たちの安全な暮らしや価値観を脅かす存在である』と一括りにしていることだ。アメリカ現政権の大統領に、そして世界中の指導者たちに言いたい。これは『悪意」である」。

 グランディ高等弁務官によると、ホンジュラスやグアテマラ、エルサルバドルから脱出し、メキシコを経由して来る多くの人々が、ギャングによる暴力に直面し、そして「自国民を守る能力のない政府」によって虐げられているという。

 UNHCRの報告によると、ほとんどの難民は富める国々ではなく、圧倒的に発展途上世界に受け入れられているという。

 強制的に住む場所を追われた人が7年連続で増加したことが、統計によって示された。

「1年また1年と、目を覆いたくなるような記録が更新されてきた。この数字の裏には、あなたや私と同じような人々が、安全や最も基本的な権利を脅かされ、冒したくもない危険を承知で旅を余儀なくされている現実があるのだ」と、イギリスの国際協力団体オックスファムのジョン・セレソ氏は述べている。

By JAMEY KEATEN Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP