「私たちにもっと課税して」アメリカの超富裕層、富裕税を支持
◆大統領選の主要議題 富裕税支持者続々
富裕層への課税は2020年の大統領選の主要な議題だとCNBCは見る。すでにエリザベス・ウォーレン氏、バーニー・サンダース氏、ピート・ブティジェッジ氏、ベト・オローク氏らの民主党候補者が、富裕層への課税を支持している。
とくにウォーレン氏による富裕税の提案は、超富裕層グループの書簡でも言及されている。これは、5000万ドル(約54億円)以上の資産に2%、1億ドル(約108億円)以上では3%を課税するという案だ。メディア監視団体『Factcheck.org』によれば、全米の7万5000世帯(全体の0.1%以下)が対象となり、10年間で約2兆7500万ドル(約297兆円)が税として納められる見込みだ。
超富裕層グループは、全体の1%である最も裕福なアメリカ人のうちの10分の1に程よい課税をすべきとしており、新たに中低所得者層から税を取るよりも、最も経済的に恵まれた者に課税せよと主張している。
◆課税逃れもあり? 国民の支持は高い
富と資本主義に関する著書を持つライナー・ツィテルマン氏は、今回の書簡の内容に懐疑的だ。フォーブス誌に寄せた記事のなかで、そもそも富裕税の議論は以前から同じようなメンバーが主張してきたものだと述べる。いかにも金持ち全員が富裕税に賛成かのような印象を与えるが、今回の18人は、資産10億ドル(約1080億円)以上の超富裕層のたった3%で、他の97%は同意してはいないと断じる。また、富裕税を支持する人々が課税逃れを行っていることもあり、ソロス氏自身が租税回避地を利用していると指摘している。
Factcheck.orgは、10年間で約2兆7500万ドルの税収が見込めるというウォーレン氏の試算についての議論を紹介している。専門家によれば、個人所有の事業など、多くの富裕税のベースには市場価格がないものが多く、評価が難しいことが問題点だ。また、ウォーレン氏の試算では、全体の15%が課税回避または脱税をするとされているが、実際は裕福な人ほど有能なアドバイザーを雇うことができるため、その率はさらに高くなるのではないかという指摘もある。最終的には見込み額の半分程度しか徴収できないのではないかという意見が複数の識者から出ている。
とはいえ、ウォーレン氏の富裕税の人気は高い。1月から2月に行われた複数の世論調査では、賛成が54%~61%となり、共和党支持者からの支持も高い(Factcheck.org)。超富裕層の書簡の影響もあり、富裕税の議論は今後さらに深まりそうだ。
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