スリランカ同時多発テロ 背景を読み解く3つのポイント

Manish Swarup / AP Photo

◆トランスナショナル化するテロ
 今回のテロでは、「ナショナル・タウヒード・ジャマア(NTJ)」が実行したとされているが、グローバルジハードを中心とする科学技術を駆使したテクノロジーテロの視点からすると、NTJは一例に過ぎない。当然ながら、NTJとISの関係を明らかにし、事件を解明していくことは重要だが、SNSや今後5Gが普及する世界においては、ISのような影響力を持つ国際的なテロネットワークが、スリランカ国内に浸透してもそう驚くことではない。ISに注目が集まるようになった2014年あたりから、「ISに参加するスリランカ人が32人いる」とか、「台頭する仏教徒の過激派集団と少数派(キリスト教徒やイスラム教徒)との間で衝突が生じ、一部のイスラム教徒が過激思想に感化されている」などの情報はあった。

 今回のテロでも、ISとの仲裁役や、オーストラリアでIS関係者と接触した者の存在が言われているが、国際的なIS網は、シリア・イラクだけでなく拡散的に存在する。よって、国内で過激化した者が、サイバー空間に蔓延する過激主義や、各地に存在するIS関係者から影響を受け、接点を持つことは十分あり得る。

 この種のテロはほかの国々でも起こってきたし、いままで発生してこなかった国々でも起こる可能性がある。決して、スリランカだからというわけではない。

◆3月のニュージーランド・白人至上主義テロの報復なのか? 
 スリランカのテロ事件後、3月15日のニュージーランド・白人至上主義テロの報復との報道が出た。これについても、現在、警察当局による捜査が進んでいる。NTJのメンバーが、それを意識して今回のテロを実行した可能性もあるが、近年、イスラム過激主義VS白人至上主義に代表される極右主義とのイデオロギー上の対立が先鋭化している。ISのテロや欧州へ押し寄せる移民・難民などの問題が影響して、近年、欧米では移民・難民を標的とした極右テロが目立っている。要は、イスラム過激主義VS白人極右主義という対立軸上で、一連のテロ事件が発生しているとみることもできる。ニュージーランドテロの容疑者は、移民・難民が白人の国を侵略しているなどと、反イスラム主義を強く抱き、同テロ後には、アルカイダやISの組織が一斉に報復を呼びかける声明を出している。

Text by 和田大樹