カリフォルニアなどで大麻成分CBD合法化の動き 規制めぐり混乱

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 クマの形をしたグミやラテを始めとするCBD(カンナビジオール)を含む飲食物や、健康補助食品は、アメリカ政府が違法と定め、地方自治体も一部の小売業者に製品の撤去を命じているにもかかわらず、次々と流通している。こうした混乱を受け、同国最大規模の2つの州を始めとする各州は、健康に効果があると広く信じられている大麻の成分を合法化する方針だ。

 テキサス州、カリフォルニア州では、反対派の議員も多くいるものの、いずれも連邦法を適用せず、大麻およびマリファナの成分の販売を許可する超党派法案の成立に向け動いている。アメリカ連邦議会でも、共和党と民主党がアメリカ食品医薬品局に考えを改めるよう求めている。

 食品医薬品局は4月2日、さらに情報を集めるため、5月に公聴会を開くと発表した。

 混乱収束に向けた動きがあるものの、CBDオイルを使った人気飲料、Vybesを製造するジョナサン・エパーズ氏にとってはもう手遅れだった。1月、同氏がロサンゼルスに構える倉庫では、カリフォルニア州の保健指導員による抜き打ち検査が行われ、10万ドル相当の飲料が押収された。

 エパーズ氏によると、それ以降、カリフォルニア州の小売業者が同氏の製品の取り扱いを中止したため、販売拠点をテキサス州に移すことになった。売上の損失額、法的手続きや移転にかかった費用を合わせると、少なくとも50万ドルを失ったとしている。

「このような事態は信じられないし、馬鹿げている。おかげで私たちは、このような曖昧な状態で損害を被ることになった」とエパーズ氏は言う。

 エパーズ氏やCBDの愛用者は、法律の曖昧さに困惑している。マリファナがすでに広く合法化されているカリフォルニア州とその他の9州では、鉢植えの場合は連邦法に基づき違法とされているが、食品を始め、高揚感をもたらす製品が販売されている。アメリカの関係当局は、鉢植えのマリファナを合法としている州には通常、干渉しない方針を通してきた。

 CBDは、2種の希少発作性疾患の治療薬として認可を受けた処方薬に現在用いられている成分であるため、食品医薬品局が監督を行っている。同局によると、他の条件下ではCBDの安全性や効果をまだ確認できていないため、CBDを食品に混ぜたり、健康補助食品として販売したりすることは許可していない。

 食品医薬品局のスコット・ゴットリーブ長官は先週、健康機能表示に虚偽の記載をしている販売業者に対してのみ、強制措置を実施していると議会に説明した。同氏によると、食品医薬品局は最近、CBDをがんやアルツハイマー病、線維筋痛症、薬物依存症の治療法として売り込んでいた3社に警告文を送付した。

 ゴットリーブ氏は、「しかし現時点では、強制措置を行う優先度の問題や、資源が限られていることもあり、私たちが措置を講じることができず、市場に出回ってしまう製品がある」と言う。

 カンナビジオールの略称、CBDは、大麻およびマリファナに含まれる非中毒性の分子だ。いずれも大麻草ではあるが、マリファナの場合は、摂取すると高揚感をもたらすTHC(テトラヒドロカンナビノール)という成分を相当量含んでいる。

 CBDオイルは、大麻草を加工する際に抽出される。基本的には、大麻の派生物にTHCは含まれていない。しかしマリファナから生成したCBDにはごく少量の、あるいは高揚感をもたらすのに十分な量のTHCが含まれている。

 販売業者や利用者は、CBDは痛みや不安、炎症に効くと言うが、その主張を支持する科学的な研究成果はわずかしかない。CBDはローション、化粧品、石鹸や、ダイエットサプリといった幅広い製品に使用される。

 州や自治体の関係当局は、CBDに対し、ほぼすべての強制措置を実施している。アメリカ最大の合法マリファナ市場となっているカリフォルニア州では、保健当局が昨年夏、議員または規制当局の許可がない限り、CBDを含むすべての食品は違法だとして、小売業者に警告を発した。

 今年初旬、州と自治体の保健当局が通報を受け、一部小企業に製品の撤去を命じるようになったが、それまでこの警告はほとんど無視されていた。

 サンフランシスコ州の保健当局は最近、2社の小規模業者に対し、CBDを含む飲食物の販売を禁じた。また、140マイル(225キロ)離れた郊外のグラスバレーでは、共同経営の小さな食料品店に対し、当局が同様の命令を下している。

 規制対象となった店舗の一つ、サイドウォーク・ウェルネスのオーナー、ガス・ダバイス氏は、「それはあまりにも不意打ちだった」と言う。

 サンフランシスコ州保健局は昨年、1,900の企業に警告文を送付したと広報担当のヴェロニカ・ヴィエン氏は言う。同氏によると、指導員はCBDを探し回っているのではなく、通報を受けて対応している。

 その結果、ダバイス氏の店舗と、CBDを使ったバブルティーを販売していた中華街の人気店、スティープ・ティー・バーの製品が規制対象となったという。

 同様の出来事は、オハイオ州にも見られる。オハイオ州では1月、関係当局がシンシナティのある食料品店に対し、2店の直売店からCBDを撤廃するよう命じた。その翌月には、ニューヨーク市の保健指導員らが多数のレストランからCDBを使った製品を撤去した。テキサス州フォートワースでは3月、地区検事長がCDBを違法と宣言したことを受け、2社の小売業者に警察の抜き打ち検査が入り、CDBを含む製品が押収された。

 テキサス州は、あらゆる形状のマリファナを違法としている数少ない州の一つだが、議会では大麻オイルを用いた食品を合法化する法案が審議されている。この法案は今週、議会の第一回委員会で難なく可決された。

 カリフォルニア州でも、州議会でCBDをめぐる同様の法案が提案された。

 この法案を提案したナパの民主党女性議員、セシリア・アギアール=キュリー氏は、「大勢の人々が長年に渡りCBDを使用しており、どこの小売店にも置いてあるにもかかわらず、今になってそれが法律に反すると知り、皆驚いている。この法案がもたらすものは、混乱の収束だ」と言う。

 同氏はまた、この法案により、州や地方自治体は食品医薬品局による規制の実施を食い止めることができるようになると述べ、8月までに法律として成立する見込みだとしている。

 業界団体、アメリカ大麻会議(U.S. Hemp Roundtable)のジム・グロス氏は、「これによりカリフォルニア州の真っ当な業界から、法律に関する不透明性を取り払うことができるだろう」と言う。

 ミッチ・マコネル院内総務や、オレゴン州のロン・ワイデン民主党上院議員など、食品医薬品局にCBDの承認を求める連邦議員は増えつつあり、アメリカ政府の規制対象から大麻を除外する法案を支持している。

 マコネル氏、ワイデン氏は2月、食品医薬品局に対し書面で、「大麻はさまざまな用途、活用法を持つ万能の作物だ。法律の実施に向けて協力することで、全国の農家にとって大麻が新たな収入源となるよう後押しできると期待している」と述べている。

By PAUL ELIAS Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP