中毒死、依存症……米国を蝕んだオピオイド鎮痛剤 寄付された「汚い金」が問題にも

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◆巨額の富で社会貢献 金の出所に批判集まる
 APによれば、パーデュー・ファーマは、訴訟による責任の負担から破産を考慮しているとも伝えられている。このニュースが影響したのか、つい最近では、同社を訴えたオクラホマ州が2億7000万ドル(約300億円)で和解した。和解金のうち7500万ドル(約52億5000万円)を支払うのは、同社を所有するサックラー一族だ。Voxによれば、同一族は同社を所有することで130億ドル(約14兆3000億円)を得たとされている。また、一族の一人が、オキシコンチンの販売を強力に推し進めたという報道も出ており、批判を買っている(Vox)。

 サックラー家はフィランソロピーと呼ばれる社会貢献活動でも有名で、スミソニアン博物館、メトロポリタン美術館、ルーブル美術館などに寄付をし、その名を冠した展示室を持っている。ところが最近になって、英ナショナル・ポートレート・ギャラリー、英テート・ギャラリー、米グッゲンハイム美術館など、これまで寄付を受けていた施設が、今後は寄付を断ると表明し始めた。サックラー家の疑惑の財産と関連づけられたくない、自分たちが反サックラー家の抗議活動の標的になりたくないという思いがあるのだろうと、Voxは指摘している。複数の寄付辞退の発表を受け、サックラー一族の二つのチャリティー組織は、一時的に社会貢献活動を停止すると発表している。

◆線引き困難 汚れた金の寄付は続く
 今回の事件でフィランソロピーへの疑念が高まった。Voxは、寛容さに対して褒めたたえるが、その裏で何をしているか、その金がどこから出てきたのかに関しては、我々はあまりにも無批判であったと反省の弁。サックラー家の問題はそういったことを正す機会になるかもしれないと述べる。ただ、明らかに表からはわからないやり方で財を成している場合もあるし、すべての篤志家に聖人であることを期待すれば、彼らの汚れた金が社会に還元されることもなくなるため、線引きは難しいとしている。

 米公共ラジオ網NPRのインタビューに答えたニューヨーク・タイムズ紙の芸術批評家、ロバータ・スミス氏も、現時点でクリーンに見える資産でも、歴史を遡れば搾取によるものだったという場合は往々にしてあり、美術館や博物館はこういった点をより気にすべきとする。しかし、施設は寄付のおかげで存続でき、篤志家は寄付することで自らの罪を和らげるという、持ちつ持たれつの関係があるため、施設側はある程度まで信念を示すだろうが、今後劇的に態度を変えるということは考えにくいとしている。

Text by 山川 真智子