「一人っ子政策」の影響に苦しむ中国 噛み合わない指導部と地方政府

AP Photo / Andy Wong

 経済成長なしには共産党の支配基盤すら揺らぎかねないことを、国の指導部は深く懸念している。加熱する中国経済は、昨年6.6パーセントの成長率を記録した。しかし、これは過去30年間で最も低い数字である。この数字によって、年金原資と膨大な数の退職者の医療費を負担するべき労働者層が、今後減少の一途をたどるという長期的傾向への不安感が、さらに大きく高まった。

 その事態の中でも、産児制限の完全撤廃に対しては、今なお大きな抵抗が予想される。なぜなら、そのことが中国の一般市民にこれまで以上の自律性を与えかねないからだ。

 ワン夫妻の事案においては、地元当局の官僚たちは、自分たちはただ単に法に従っているだけだと主張し、その根拠となる具体的な法律条項まで引き合いに出した。彼らもまた、自分たちの職務と権限の拠り所となる現行のルールを維持したいという、強い利権意識に縛られているのだ。

 中国メディアの報道によると、「計画外に生まれた余剰人口が消費する予算を補うため」との名目で徴収される料金・過料は、地方政府の裁量予算の15〜30パーセントと大きな割合を占めている。そしてその予算は、実際には職員給与から旅費に至るまで、幅広い目的に使用可能だという。

 これまでのところ、中国の国家衛生健康委員会は、「家族計画に関わる法規制を撤廃せよ」という世論の要求をはねつけており、 その理由として中国憲法第25条を引用している。そこには、「国家は、人口増加が経済・社会の発展計画に沿うよう、家族計画を推進する」と書かれているのだ。

 もっとも、もし仮に法改正が行われたとしても、近年の傾向を見る限り、それでただちに出生数の増加が保証されるわけではないことは明らかだ。

 現在中国では、食品と医薬品の安全性に関するスキャンダルが頻繁に起きている上、人々は高騰する住宅費、教育費、医療費、さらには安全な食品の価格上昇に対して大きな不満を抱えている。

 また中国の若者たちの間には、海外旅行などの活動を大いに楽しむ一方、結婚・出産は単純にどこまでも先延ばしにしている風潮がある。

「住宅や休暇のことなど、子供を産む以外の関心事がいくつもあります。私の両親は早く子供を産めとプレッシャーをかけてきますが、私としては、今はちょっと無理と答えるだけです」。「リンダ」という名前以外は出さないことを条件に、ある職員はこのようにコメントしている。

 出生率を高めるには、「経済、社会、教育システムの改革は避けて通れない」とイ氏は電子メール上で語っている。

「しかし、実際それは非常に困難でしょう。言うまでもなく前提として、人権の尊重や、国民の身体に対する政府統制の放棄も要求されてくるわけですから」。

By CHRISTOPHER BODEEN, Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP