「一人っ子政策」の影響に苦しむ中国 噛み合わない指導部と地方政府
地元メディアは先週、夫のワン・バオフア氏の声を伝えた。「今後どうしたらよいかわからないです」。
ワン夫妻が直面するこのような状況の根本には、「中国人口は、やがてはその資源量をも凌駕する」という過去の時代の恐怖心と、人民の最も個人的な意思決定すらもコントロールしたいという独裁政党・共産党の熱烈な欲求がある。
中国の家族計画法制は1970年代に始まり、1980年には悪名高い 「一人っ子政策」が施行された。違反した者に対しては、中絶や避妊手術の強要などの過酷な刑罰を含め、罰金、職場での降格など、幅広い処分を課してきた。
それから35年を経て、中国の指導部は、人口高齢化と労働力減少が将来の国家の発展を大きく阻害する危険性に気づき、政策の急転換を命じた。2016年には、「一人っ子政策」が正式に「二人っ子政策」に置き換わり、中国の夫婦は、にわかにその制限の範囲内で子供を増やすよう促されたのである。
しかし、その結果もたらされた出生率上昇の傾向は、ごく短期間しか続かなかった。中国の国家統計局は先月、2018年の新たな出生数は13億9,500万人の総人口に対して1,523万人だったと発表した。つまり、人口増加率は0.381パーセントと1961年以降最低の増加にとどまり、2017年と比較すると、その出生数は200万人以上も少ないという数字が示された。
中国人口は2029年に14億4,200万人というピークを迎え、その後は徐々に減少していくと推定されている。このままでは中国は、「豊かになる前に老いる」という古い格言どおりの事態を迎えることになる。
ウィスコンシン大学マディソン校の教授で中国の人口政策の批判者として知られるイ・フーシャン氏によると、中国社会は出生率低下の問題をすでに深刻に受け止めているにもかかわらず、先述のワン夫妻のようなケースが、いまだに数多く発生しているという。
イ氏によれば、この問題の根底には、惰性で仕事をする官僚の怠慢と、地方公務員の予算獲得願望がある。
2018年に推定出生率1.02を記録した中国は、もはやこの時点で、台湾、香港、マカオ、シンガポールといった低出生率の中華系社会と同じカテゴリーに属しているとイ氏は言う。実際、今ここに挙げた国や地域における2005年から2017年までの平均出生率は、それぞれ1.10、1.12、1.08、1.23だった。
だが、そういった情勢にもかかわらず、子供が一人しかいない、あるいは一人もいない家庭が今では社会の標準的な家庭像を構成しており、結果として、家族や社会、出産に対するひどく偏った世論が形成される――そのような形で、「一人っ子政策」は今でも影響力を持ち、中国社会にさらなる影を落としているのだとイ氏は語る。