コンゴのエボラ流行、なぜ勢い止まらないのか? 発生から半年 史上最悪になる可能性も
コンゴ民主共和国東部でのエボラ出血熱の流行は、現時点では史上2番目に大規模なもので、2月1日、最初の発生報告から6ヶ月を迎えた。現在エボラは主要な国境都市・ゴマに向かって広がりをみせており、もともと政情不安なこの地域で、ウィルス拡散を阻止することが非常に困難な情勢となっている。
今回のエボラの流行は、史上最悪の大流行へと発展する危険性をはらんでいる。医療関係者らは、反政府勢力からの攻撃の脅威に加え、エボラに怯える地元コミュニティーからの強い抵抗にも直面している。
人々の往来が激しいこの地域で、先週だけでも2つの危機的事態が発生した。まず、広域にわたってビジネスを行っていた若い交易商がエボラウィルスに感染している事実が発覚。これを受けて、南スーダン国境付近の州でも新たにワクチン接種の実施が決定された。コンゴ民主共和国でワクチン接種が行われる州は、これで3つ目となる。また、エボラによる死亡患者と接触した履歴のある2人の人物が、現地の規制をすり抜け、現時点ではまだエボラの症例報告のない隣国ウガンダの首都・カンパラまで移動していたことが発覚したのだ。
しかしその一方で、今回のエボラ流行では、実験段階にあるエボラワクチンの大々的な使用や、実験的治療法の臨床試験など、その流行対策において数々の進歩が見られることも事実だ。医療関係者によれば、数年前に西アフリカでエボラが大流行した際、粗末なテントに何十人もの患者が詰め込まれ、バケツをトイレ替わりに使用していた当時の凄惨な状況と比べると、今回は状態に改善がみられるという。
◆統計が示す流行
コンゴ保健省は759人の症例を報告しており、そのうちエボラと確定したのは705人で、ここまでエボラによる死者は414人。エボラ出血熱は、死亡した患者の体液を介しても感染する。
すでに7万人以上が、実験段階のエボラワクチンの接種を受けた。ただし、ワクチン接種を受けた人の中からもエボラの発症例が報告されており、ワクチンの効果は現時点では未知数だ。ワクチン備蓄が底をつくことへの不安が高まる中で、1月下旬、製薬会社のメルク社は、追加で12万接種分のワクチンを2月末までにコンゴ民主共和国向けに出荷すると発表した。
女性や子供の患者数も相当な数に上っており、そこには18歳未満の少年少女160人以上が含まれている。ユニセフ(国連児童基金)によると、今月までに280人以上の子供たちが保護者を失って孤児となった。
これまで確認された感染ルートとは一切関連がみられない新たな患者の報告も、依然として続いている。部外者に対する警戒心が強く、インフラ網も未整備なこの人口密集地域において、ウィルス感染ルートを正確に把握することは極めて困難だ。これまでに数百万人がルワンダおよびウガンダの国境検問所でエボラの検査を受けている。WHO(世界保健機関)によれば、この両国もまた、エボラ流行の「非常に大きな危機」に直面している。
◆武装勢力と流言の脅威
「現地の人々は、未だにエボラがどのような病気かを理解していません」と、国境なき医師団所属の医師、ブライアン・デクルース氏は今週コメントしている。すでに発生から6ヶ月。医療機関のチームがエボラ流行の発生直後から、この病気に関する現地の人々の誤解を正そうと奮闘してきた。にもかかわらず、まだこのようなコメントが出てくることには、正直驚かされる。治療により回復した患者の一人であるアリン・カヒンド・ムカンダーラ氏は、国境なき医師団に対し、彼女を含めた多くの人々が、「エボラ患者は治療センターに到着次第、その場で死体袋に入れて処分される」と考えていたのだと言う。
また別の生存者は、教会、市場、学校で行われる赤十字国際委員会の啓蒙活動の中で、地元コミュニティーの人々に向けて次のように話している。「いいえ、ここにいる外国の方々は、私たちから臓器を盗むために来たわけではありません」
エボラ対策に従事する作業員は、反政府勢力と地元コミュニティーの両方から攻撃のターゲットにされている。また、エボラに恐怖を抱き、この地域から逃亡を試みる人々もいる。結果として、治安上の脅威を理由にウィルス封じ込め作戦がたびたび中断を余儀なくされ、そのたびに新たな感染が他地域に飛び火する危険性が高まっているのだ。
◆次なる恐怖
現在エボラが流行している地域は、人の往来の激しいルワンダ国境に位置する100万都市ゴマから車で1日の距離にある。国連によれば、エボラ流行阻止の最前線はすでにゴマに移っており、そこではすでに、2,000人近くの現場作業員がエボラの予防接種を受けて準備を行なっているという。
医療専門家の一部は、今回のエボラ拡大がウィルス封じ込めの努力を凌駕し、政情不安なこの地においてこの病が恒久的な脅威として定着してしまう危険性がある、と警告している。仮にそれが現実となった場合には、もうすでに困難に窮している医療機関が、さらなる対応を迫られることになりかねない。エボラの対応にあたる作業員は、可能な限り、頭からつま先までを覆う防護服を着用の上で、ウィルス感染者から常に2メートル以上の距離を保つことが望ましいとされている。しかしこの前提のもとで、地元の医療従事者が、700万と推定される北キヴ州の住民の出産介助やマラリア治療、そのほかの日常医療業務をいかにして行っていけば良いのか、その見通しは立っていない。
また、もし仮にエボラがこの地に定着してしまった場合には、エボラの広がりを食い止めるための国際的取り組みを支える資源・資金をどのように継続的に確保するかが課題となる。さらには、隣接する国々は感染者の流入阻止のため、国境での徹底したヘルスチェックを恒久的に実施する必要に迫られるだろう。
By CARA ANNA, Associated Press
Translated by Conyac