薬物依存の囚人に、子犬という力強い味方 米刑務所で試み

AP Photo / Elise Amendola

 ニューハンプシャー州の刑務所に服役するケイトリン・ハイランドの独房には、家族の写真、数冊の本、簡易ベッドが置かれている。これだけなら他の多くの囚人とそう変わらないが、たった1つだけ、彼女の部屋にしかないものがある。生後4週間の子犬のために置かれたケージだ。

 ニューハンプシャー州コンコルド出身のハイランド氏(28)は、薬物に関する罪で服役中だ。メリマック郡刑務所では、来月まで受刑者による子犬訓練プログラムを実施しており、彼女も参加者4名のうちの1人だ。同刑務所はヒーロー・パップスという団体と提携し、薬物依存治療プログラムに参加する受刑者(男女2名ずつ)に2ヶ月間子犬を飼育させる。そして、ここで育てられた犬たちは最終的に、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ退役軍人や災害救助隊員などのもとに送られる。

 チョコレート色をしたラブラドールのミックス犬の飼育担当に選ばれたハイランド氏は、「もう一度チャンスをもらったような気がします」と語る。彼女の役目は、1日3回の餌やり、2時間おきに20分間の散歩、そして服従訓練の実施だ。彼女は四六時中、犬と一緒に生活する。

                                                                                                                 

「無条件に愛することは、本当に素晴らしいことです。バランスの見出し方を教わっています。愛され方を知るには、まずは自分自身を愛さなくてはなりません」と彼女は言う。

 別の受刑者、ニューハンプシャー州バーンズステッドのマーティン氏(33)は、犬に目的意識を与えてもらったという。

「犬が別の誰かを救いに行くのだ、と知ったことが、非常に大きかったです。私自身にとって、そして薬物から立ち直っていく上で、人生を変える出来事になりました。本当に、犬は2つの人生に変化を与えているのです」

 今回のプログラムは、ニューハンプシャー州で初めての試みだが、アメリカ国内では同様に受刑者に動物(通常は犬)を飼育、世話をさせるプログラムがいくつもある。

 マサチューセッツ州とロードアイランド州では、「NEADSワールドクラス・サービスドッグス」という団体が7つの施設と協力し、受刑者による犬の訓練を実施している。また、ミネソタ州、アイオワ州、ミシガン州の刑務所では、「リーダードッグ・フォー・ザ・ブラインド」の協力のもと、未来の盲導犬となる子犬を育てている。ニューヨークのエリー郡矯正施設では、受刑者がキジのひよこを飼育し、野生に帰すというプログラムを実施している。

 プログラムの支持者によると、子犬は献身的なトレーナーを得ることができ、受刑者もまた釈放後に役立つ思いやり、優しさ、積極性といったスキルを身につけることができるという。刑務所での子犬飼育プログラムは、受刑者の不安やうつ症状を軽減し、職員の士気を高めるという研究結果も出ている。同プログラムによって再犯率が下がるとしている報告もあるが、子犬が具体的にどんな役割を果たしたのかについては、まだ明らかにされていない。

 ニューハンプシャー州のメリマック郡矯正局長を務めるロス・カニンガム氏は、「薬物依存治療を受けている受刑者が二度と薬に手を出さないよう、子犬プログラムがその助けになれば、と願っています」と述べた。

「プログラムによって、犬は責任感を身に着けます。人間界の仕組みを教わるのです」と彼は言い、刑務所で訓練を受けた犬が社会に戻り、家族の一員になっていることに感謝していると付け加えた。

 ヒーロー・パップスの取締役会長であるローラ・バーカー氏は、以前からずっと受刑者と仕事がしたかったのだ、と話した。受刑者による犬の訓練は「驚くほど成功率が高い」ためだという。その理由について、「一般社会のボランティアは他にもこなすべき使命あるのに対し、受刑者の場合は訓練対象の動物に集中することができ、多くの時間を犬に費やすことができるため」と彼女は話す。

「これらの犬は、人々を救いに行きます」と、2016年以降、40頭もの犬を訓練したバーカー氏は言う。「受刑者の方に、ポジティブな何かを寄与できたなら、いっそう素晴らしいですね」

 先週、刑務所内で警戒レベル最低ランクのユニットに子犬がやってきた。その影響は、飼育担当の4人以外にも及んでいる。毎日、ユニット内にいる30名の受刑者全員が犬たちと交流する機会を持ち、テレビ部屋や、その他の共用スペースにゴム製の犬用おもちゃが置かれていた。ある受刑者は、刑務所では寒さや緊張を感じることが多いが、犬が跳ね回ったり、居眠りをしたり、キャンキャン吠えたりすることで、正常な感覚を与えてくれるのだと話した。

 メリマック郡矯正局長のカラ・ワイマン氏は、「ポジティブな効果がありました。監視カメラに、子犬が走り回っている姿が映っているのですから。それがスタッフを高揚させてくれるのです」と話す。

By MICHAEL CASEY, Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP