「国境の壁資金」23億円集めた退役軍人、政府に寄付せず自身の非営利団体に

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「国境の壁建設」を目指すトランプ大統領が予算案を拒否したことから、アメリカでは政府の一部機関閉鎖が続いている。しかし、米下院の過半数を握る民主党側がトランプ氏の主張を全面的に受け入れる気配はまったくなく、にらみ合いはしばらく続くと思われる。

 米議会が国境の壁建設資金を許可する気配はないが、政府機関閉鎖が始まる前の昨年12月17日、米空軍の退役軍人がクラウドファンディングサイト『ゴーファンドミー(GoFundMe)』で国境の壁建設資金を募るキャンペーンを開始。国境の壁を支持する多くの人々が寄付し、その額は1月21日現在2,074万6,484ドル(約23億円)となっている。

◆集まった寄付金を自分の非営利団体資金に
 同サイトによると、このキャンペーンを始めたのはフロリダ州在住のブライアン・コルフェージ・ジュニアさん。退役軍人で、イラクで右腕と両脚を失ったコルフェージさんは、現在は保守派モチベーション・スピーカーとして各地で講演を行っている。コルフェージさんが設定したキャンペーン目標額は10億ドル(約1,095億円)だった。

 しかし、経済サイト『マーケットウォッチ』の15日付報道によると、その後コルフェージさんは集まった寄付金が連邦政府に寄付できない規制があることから、自分が設立した非営利団体「ビルド・ザ・ウォール」の資金にすると発表。しかし、ゴーファンドミーの規定で最初に設定した寄付先を変更することができないため、1月11日以降に集まった寄付金を自分の非営利団体による国境の壁建設資金にすると述べた。

 ゴーファンドミーがマーケットウォッチに送ったメールによると、コルフェージさんは「集まった寄付金を全額政府に寄付する」としてこのキャンペーンを開始し、「集まった金額が目標額に達しない、またはかなり目標額近くにまで達しない場合は100%返金する」と語っていた。23億円という多額の寄付金が集まったものの、目標の10億ドルにはかなり遠いため、寄付金は返金されることになった。

 コルフェージさんによるキャンペーンサイト上の記述によると、寄付金の行き先が変わったことを表明した11日以降に集まった金額、または寄付者が行き先変更を許可した場合はこの限りではないという。ニューズウィーク(電子版)による16日付報道によると、コルフェージさんはそれまでに集まっていたおよそ2,000万ドルの寄付金のうち、約700万ドル(約7.7億円)分の寄付者がこれを承認したと主張。しかしゴーファンドミーがその主張を確認したわけではなく、この額は「予想」だという。

Text by 川島 実佳