欧州が直面する出所テロリストの脅威 大量出所控え、懸念高まる

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◆非テロリストを勧誘 刑務所でネットワーク作り
 SUPOのディレクター、Anitti Pelttari氏は、服役中のテロリストが、刑務所内で組織犯罪ネットワークを構築している可能性もあると指摘する(YLE)。

 テロリストがテロ以外の罪で服役している受刑者に過激思想を教え込むケースもあるという。刑務所内でイスラム教に改宗し、ムスリム・ギャングに加入する動きも広がっている。こういったテロリスト予備軍も含めれば、イギリスではイスラム主義や極右イデオロギーを含む過激主義とつながりを持つ受刑者が700人はいると見られており、彼らの出所も大きな社会問題となりそうだ(インデペンデント紙、ガーディアン紙)。

◆出所者が新たなテロ計画? 脅威はなくならない
 今年8月までに欧米で起きたテロの件数は4件で、ここ数年で最低となっている。1件当たりの最大死亡者数も1ケタとなり激減した。シリアやイラクを占領していたISISが領土のほとんどを失い、戦力が低下したことが関係しているという見方もあるという(ニューヨーク・タイムズ紙(NYT))。

 しかし、欧州でのテロの試み自体は減った訳ではないという。パリのテロリズム分析研究所(CTA)のデータによると、ISISがEUの28ヶ国で実行したテロ攻撃は15件だったが、47件が計画中または実行中に阻止されている。

 CTAのJean-charles Brisard氏は、ISISの勢力が弱まっても、人々を傷つけたい個人の心には、ISISのイデオロギーが宿っているとし、ISISの弱体化とテロの脅威には関連性はないとNYTに語っている。刑期を終えたテロリストたちが、ISISに代わる新たな指導者とならないことを祈りたい。

Text by 山川 真智子