欧州が直面する出所テロリストの脅威 大量出所控え、懸念高まる

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 テロ犯罪の増加に伴い、現在欧州では多数のテロリストが服役している。それらのテロリストが今後数年で次々に出所してくると見られている。欧米ではISISやイスラム過激派によるテロは激減しているが、これらの受刑者が自由になることで、新たなテロの危険性が増大すると指摘されている。

◆刑務所はテロリストだらけ? もうすぐ出所ラッシュ
 フィンランドの治安情報サービス(SUPO)は、テロの罪で服役中の欧州にいる200人以上の受刑者が、今後数年以内に刑期を終え社会に舞い戻ってくるとしており、彼らが新たな脅威となる可能性があると見ている(フィンランド国営放送、YLE)。

 イギリスでも記録的な数のテロリストが服役しており、ガーディアン紙によれば、2007年から2016年に刑を受けた193人中80人以上が年末までに刑期を終えるが、刑期途中で仮出所する者もいるため、実際に出所する数はさらに増えるという。

 刑務所内では、過激主義者へのリハビリプログラムが用意されているが、人手不足で通常の受刑者への対応もままならない刑務所職員がテロリストを更生させることはできない、と元刑務所長のイアン・アチソン氏は指摘する(ガーディアン紙)。出所したテロリストに対する保護観察の制度もあるが、こちらも人手不足で十分ではない。再犯の意思がある者は、保護観察中は静かにし、監視の目がなくなってから犯行に及ぶということで、保護観察士と対テロ警官にとっては重荷になっているという。

 インデペンデント紙によれば、現在イギリスの警察は2万人の要注意人物を監視対象にしているが、全員をカバーできるだけの人手もないのが実情で、出所したテロリストたちが監視の目をすり抜け、新たなテロを犯す危険性が指摘されている。

Text by 山川 真智子