クラウドファンディングサイト、詐欺の温床にも……迫られる規律の見直し

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 インターネットが発達し、日常のあらゆることがオンラインでできるようになってきた昨今。以前は街角やテレビなどで直接行われることも多かった寄付・募金活動さえも、「クラウドファンディング」としてネット上で行われることが多い。ネットで事故や病気などで助けが必要な人に関する悲劇的なニュースを読むと、「クラウドファディングで募金を行っている」という文章から募金サイトに飛ぶようリンクが付けられていることも頻繁にある。

 そんなネット募金活動を行う代表的なサイトには、「ゴーファンドミー(Go Fund Me)」や「インディゴーゴー(Indie Go Go)」などがある。サイトを見てみると、第三者が別の人物や団体のために資金集めをしていることも多い。

◆クリアでない寄付金の使いみち 
 では、そのような第三者が他人のために不特定多数の人々から寄付を募るクラウドファンディングに100%の信憑性はあるのだろうか? その答えは「NO」だ。募金活動を行っているのが個人である場合、寄付を募る理由や本当の状況、そして集まった寄付金の使いみちを、寄付する人が前述のようなサイトで確認することはほぼ不可能だからだ。

 今年8月29日付のピープル誌(電子版)は、重病を患った妻の治療費を稼ぐためにトラック運転手として仕事を探す87歳の老人の話を掲載した。その記事内にあったゴーファンドミーのリンク先を見ると、募金活動を行っていたのは「ニュースを読んで黙っていられなくなりクラウドファンディングを始めた」というまったくの他人だった。この女性は老人が働かなくてもいいよう募金活動を始めたというが、これは募金の対象と寄付を募る人が面識がないケースである。これでは、いくら募金活動をしている人が崇高な目的を持っていようと、集まったお金の使いみちはクリアにならない。

 その後、募金活動を行っている女性は老人男性と「コンタクトして、フェイスタイムもした」と述べたが、第三者がその発言の真偽を確認する術はない。

◆心温まる「美談」が一転、詐欺事件に発展 
 そんななか、およそ1年前に人々の心を温かくした「美談」が、クラウドファンディング詐欺事件に発展したというニュースが報道された。タイム誌の記事(2017年11月24日付)によると、昨年10月、ガソリンとお金がなくなって道路脇に立往生した女性、ケイト・マクルアさんのために、元軍人でホームレスのジョン・ボビットさんが持っていた最後の20ドルを使ってガソリンを購入。感動したマクルアさんがその後、「ゴーファンドミー」にボビットさんのために寄付金を募るアカウントを作成した。

 マクルアさんは当初、寄付金が多く集まることを期待していなかったのかもしれない。しかしそれは瞬く間に集まり、なんと最終的には40万ドル(約4,400万円)に到達した。

 善意の寄付金が予想より多く集まったことで、マクルアさんと彼女のボーイフレンド、マーク・ドアミコさんはそのお金を渡すことが惜しくなったのかもしれない。9月10日のFoxニュースの報道によると、マクルアさんとドアミコさんは、ボビットさんのために集めた寄付金を自分たちの銀行口座に入れ、その後すぐに使い始めた。ボビットさんには最低限しか与えず、自分たちの旅行やギャンブル、靴などに大金をはたいたという。

 NBC系テレビ局WGRZ(電子版)の報道(9月14日付)によると、ニュージャージー州司法長官はゴーファンドミーなどクラウドファンディングサイトの「経営の方法を調査する」と述べた。同州司法長官のリサ・コリエル報道官は、同州司法当局がこれまでクラウドファンディング詐欺についての捜査をしたことがないが、「クラウドファンディングは比較的新しいもの(ビジネス)であるため、新たな疑問がわいてくる」と述べた。

 また同報道官は、ニュージャージー州で行われる募金活動はネットであろうと伝統的手法であろうと「(募金目的などについて)真実の記述をする必要がある」とし、また集まった寄付金は「チャリティが行われた目的のために使われなければならない」と指摘した。

 現時点では野放し状態になっている感のあるこれらのウェブサイトだが、今後募金を行う人物の身元調査や、振込み先口座と金銭の受け渡し完了の確認などを行い、寄付金集めの目的が正当であり、集まったお金が目的通りのことに利用されることを確認する監視機能強化の必要性がある。それができない場合は、今後クラウドファンディングサイト運営方法への司法による介入が本格的に実施される可能性も大きい。

Text by 川島 実佳