「暑すぎる東京五輪」への海外の懸念、決定直後から 「死の可能性」と不安煽る報道も

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 今年の日本の夏の酷暑ぶりは国内メディアやSNSを大いににぎわせた。その中には2020年開催予定の東京オリンピックが、1年で最も暑い7月下旬から8月上旬に開催されることに疑問を呈する意見も多く見られた。

 海外メディアもまた同様の内容を伝えるところが少なくなかったが、その論調は、暑さの深刻さについては詳細に伝える一方、ミストシャワーの導入などの暑さ対策についての文字数は多くなく、皮肉と、参加者の健康状態への懸念を含んでいると取れなくもないものが目に付く。実はこのような論調の海外メディアの記事は、東京がオリンピック開催地として決定されて以来、折に触れ伝え続けられていた。

◆東京五輪決定直後からあった酷暑への懸念
 ブルームバーグは、東京がオリンピック開催地に選出された直後の2013年9月、その年の8月にも気温が華氏100度(約38℃)になった東京は酷暑の都市であり、東京オリンピックの男子マラソンのときにも気温が華氏100度(同)以上になれば、オリンピック史上、男子マラソン開催時の気温として最も高いものになると述べた。そして、1900年のパリオリンピック男子マラソン開催時は華氏95ー102度(約35−38℃)という気温であったとされており、それがこれまでの最高で、その際は約半数の選手が疲労を理由に棄権したという。さらに英ラフバラー大学のジョージ・ハベニス環境生理学・人間工学教授のコメントを借り、この暑さは観客にもまたリスクがあると伝えた。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は2014年8月の記事で、地球温暖化と、東京都心部の気温を周辺地域よりことさら高くしているヒートアイランド現象が続けば2020年の東京の気温が今より下がることは考えにくいといい、さらに、エアコンメーカーのダイキンが2014年に発表した、東京の夏を経験したことのある外国人100人を対象にしたアンケート結果を取り上げ、気温が東京よりも高くなる国から来た人たちを含む90%が東京の夏は自国よりも暑く感じると回答したこと、半数以上が屋外でオリンピックを観戦できるかわからないと答えたことに触れ、東京の夏の体感温度は実際の気温より高いと伝えた。そして、それにもかかわらず、国際オリンピック委員会の規定のために、7月24日から8月9日までという現在決定されている真夏の開催日程が変更できないことを強く懸念する論調であった。

 科学誌ネイチャーは、2016年8月、カリフォルニア大学の研究チームが、気候変動のため2088年にはほとんどの都市がオリンピック開催に適さなくなるという研究結果を発表したと伝える記事のなかで、同研究のメソッドで計算すると2020年の夏季オリンピック開催候補地の最終選考に残った3都市の気候はどれも開催に適していないと述べた。

◆待たれる具体的かつ効果的な酷暑対策
 開催まで2年と迫ったこともあってか、今年は海外メディアの日本の酷暑とオリンピック開催への懸念についての記事がこれまでよりさらに多数見られた。ロイターは、東京オリンピックの暑さ対策に関する記事を載せ、東京都とオリンピック組織委員会がミストスプレーや路面温度を抑える舗装技術など最新技術で対応しようとしている取り組みについて書いたが、「いずれの技術もいまだ承認を得ていない」と締める。

 また、英タイムズ紙のように「東京の夏の暑さのために死亡するオリンピック選手が出る可能性を複数の専門家が警告」などというセンセーショナルで不安を煽るようなタイトルと内容の記事もある。このような報道がつづけば東京でオリンピックを開催する意義をも揺るがしかねなくなるため、内外の人たちを納得させる、より効果の高い具体的な対策の発表が望まれるところだ。

Text by Tamami Persson