東京医大の女子減点、海外メディアも大々的に報道 国内の反発にも注目

Have a nice day Photo / Shutterstock.com

 東京医科大学が、入試で女子受験者の得点を一律に減点していた問題が海外でも大きく報じられている。「女性は結婚して子供を持ったらやめる」という認識から起きた日本ならではの男女差別と見られているが、その日本社会でも事件に対する怒りが沸騰していると伝えられている。

◆不都合な女子の学力アップ 恣意的操作で合格者抑制
 海外メディアのソースとなったのは、読売新聞の記事だ。文部科学省の前局長の息子を、当時の東京医大の理事長が不正に合格させたという疑惑の捜査中に浮上してきたニュースと解説しつつも、むしろより重大な問題として注目している。

 読売新聞の記事をベースとした各メディアの報道をまとめると、同大学では2010年に女子の合格者の割合が全体の38%に達したため、女子の合格者数を低く抑える目的で、2011年ごろから女子受験者の1次試験の得点に特定の係数を掛けて一律減点するようになった。APによれば、以来女子合格者は38%を上回ることはなく、今年は18%にまで落ちていたという。今年の女子の最終的な合格率は2.9%で、男子は8.8%だった。

◆男女差別が根強い日本 長期的には損失
 女子受験生の得点を操作した理由は、多くが出産・子育てのため、離職してしまうと大学側が考えていたためだと報じられている。「男子を合格させたほうが、医師不足への解決策になるという『暗黙の了解』があったため」という匿名の関係者が読売新聞に語ったコメントを、海外メディアは伝えている。日本の文科省関係者は、学校側が男女比を設定することは許可されているが、そのような方針は事前に公開するよう指導されていると話している(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

 ワシントン・ポスト紙(WP)は、男性医師に比べ、女性医師が離職する確率は高い傾向にあることは事実だとするが、だからといって女性を医大から締め出すことが適切で効果的対応という考えには、反対が多いと述べる。UCLAの助教授でもある医師の津川友介氏は、母親をサポートしないことは日本社会の組織的な問題だとしており、高齢化する日本で優秀な女性を医大から排除することは、長期的に見れば損失になると述べる。医大の仕事は医師を訓練することであり、労働力の最適化ではないとも述べ、大学による得点操作を行き過ぎた行為と見ている。

◆識者から一般ネット民まで、世論は大沸騰
 海外メディアは、このニュースに対する日本国内での反発が非常に大きかったことを伝えている。APは、日本女医会の前田佳子会長の、「日本女性がいまだに医師を目指すための権利をはく奪されているということは驚くべきこと。女性の離職を心配する代わりに、女性が働き続けられる環境を作ることに注力すべき」という意見を紹介している。

 WPは、日本女性医療者連合の種部恭子理事の、「他でも似たような女性志願者への差別がおそらくあるだろう」というジャパン・タイムズに対するコメントを取り上げている。OECDの調査では、2016年の女性医師の割合は、日本では約21%と調査対象となった34ヶ国の中で最低だった。APは、日本の労働力の40%以上を女性が占めているのに、医師国家試験に合格した女性医師の割合はここ20年以上約30%と横ばいだと指摘。この進歩の遅さに、大学受験の選考プロセスへの幅広い干渉が影響していると推測する医師もいると述べている。

 BBCは、ヤフー・ジャパンなどのネット上で、ユーザーが怒りや驚きを共有しているとし、「考え方が古くさい以前の問題」、「東京医大から補助金は取り上げるべき」といった批判を紹介している。英テレグラフ紙は、安倍首相が目指す「女性が輝く社会」とは裏腹に、日本女性は職場での厳しい戦いや産後復帰におけるハードルに直面していると述べる。女性の苦悩を表す例として、「女性は子供を産めと言われ、産まなければ『非生産的』と揶揄される。その一方で、子供を産むかもしれないという理由で減点される。いったい女はどうすればいいの?」というソーシャルメディア上のコメントを掲載している。

Text by 山川 真智子