韓国人の8割「異性への嫌悪表現が深刻」 若い女性ほど危機感強い傾向

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 今年7月に韓国の女性優越主義団体「womad(ウーマッド)」が、聖体(カトリック教会の儀式で配られるパン)に落書きをして燃やした写真を掲載し、「女性を抑圧する宗教は消えろ」とのメッセージを発信したことで、韓国社会に大きな衝撃が走った。一部のSNSコミュニティで醸成された異性に対する過激な差別意識が表面化し、韓国では男性嫌悪・女性嫌悪の広がりを心配する声が強くなってきている。

 これを裏付ける調査結果も発表された。韓国言論振興財団メディア研究センターが、女性・男性嫌悪の認識について、20〜50代の成人男女1000人を対象にオンラインアンケート調査を実施した結果、回答者の80.7%が「性別に基づく憎悪表現の問題が深刻だ」との認識を示していることがわかった。

◆性別や年齢で受け止め方に差が
 具体的に見ると、「性別嫌悪表現の問題の深刻さ」を問う項目では、「非常に深刻である」(28.5%)、「やや深刻だ」(52.2%)となった一方で、「深刻ではない」(15.0%)、「関心がない」(4.3%)と回答した割合は少数だった。

 また男女別では、女性(85.8%)のほうが男性(75.6%)より問題を深刻に受け止めており、年齢別では20代(92.8%)、50代(68.0%年)と、若い世代ほど割合が高くなった。未婚者(87.9%)が非婚主義者(80.8%)に比べて少し高くなったのも特徴的といえる。

 きっかけはあった。現在韓国では、化粧や服装など社会的な女性らしさを求められることに反発する「脱コルセット運動」や、盗撮事件の偏向捜査デモ(大学内で男性ヌードモデルが女によって盗撮された事件で、被害者が女性ではなく男性だから捜査が通常より迅速に行われたとフェミニスト団体が抗議している運動)が活発に行われている。

 アンケートでは両運動を支持するかどうかも聞かれ、女性回答者の50.8%が支持を表明したのに対し、男性は21.8%にとどまるなど、男女で考え方の違いがはっきりと分かれた。

 支持派の意見として「女性の人権と女性の処遇は改善されなければならないから」などが挙げられ、不支持派は「女性の人権を改善し、女性の地位を向上させるための運動がむしろ女性に関連する社会問題に対して否定的な見方を強めるから」などの理由を挙げた。

◆「マスコミは男女対立を煽るのは自制せよ」との声も
 同調査では回答者に「異性嫌悪を解決する効果的な方法は何か」も聞かれた。その結果、「マスコミによる事実確認を徹底させて異性嫌悪に関するフェイクニュースを選別する」が34.6%で最も多かった。次いで、「(男女性に関する)認識の改善に向けたキャンペーンや教育」(26.2%)、「メディア自体が異性嫌悪を煽る表現や報道を自粛すること」(25.0%)などと続いた。

 韓国言論振興財団は調査結果を受けて「最近、スポットライトが当てられる性別間の嫌悪表現問題は一部団体の単発的な刺激や葛藤の問題でなく、性の役割と平等および人権など根本的な解決が必要なことであることを今回の調査結果は示唆する」と説明した。

 韓国人のほとんどが異性嫌悪の深刻さを認識していることがわかった今回のアンケート調査。男女対立改善に向けてメディアを通じた正しい情報の発信が期待されている。

Text by 古久澤直樹