「隣家に大きな黒人が……」自宅にいただけで通報されたヴィング・レイムス 米国の根強い偏見

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◆警察に発砲され自宅ガレージで死亡
 レイムス氏の場合、すぐに誤解が解け事なきを得たものの、警察が事実関係を確認する前に有無を言わさず発砲した場合、事態が悲劇的に終わることもある。2014年にフロリダ州で発生した事件はまさにそのパターンだった。

 地元紙マイアミ・ヘラルド(電子版)の6月1日付記事によると、2014年同州の自宅ガレージ(車庫)内でグレゴリー・ヒルさんは大音量で音楽を聴いていて、隣人に通報された。警察がヒルさん宅に駈けつけてガレージのドアをノックしたところ、ヒルさんは一旦ドアを開け、またすぐに閉めたという。警察はガレージのドア越しに発砲し、ヒルさんを射殺した。

 警察はヒルさんが銃を向けたと証言したが、ヒルさんは弾丸の込められていない銃をパンツの後部ポケットに入れた状態で見つかったという。記事によると、その後、遺族が業務上過失致死でヒルさんを射殺した警官を訴えたものの、陪審団はヒルさんの死亡は99%ヒルさんの責任として、遺族にたった4ドルの賠償金を与える判決を下した。さらにその後、4ドルの賠償金をなんと4セントに減額したというのである。

◆事件に共通する人種的偏見と恐怖感
 2つの事件に共通するのは、「黒人=悪いことをしている」という自動的な人種的偏見と根拠のない恐怖感だろう。これらの事件は、2012年にフロリダ州で親戚宅を訪れていたトレイヴォン・マーティン君(当時17歳)がゲート付き住宅地の敷地内を歩いている際、自称自警団の男に後をつけられて射殺された事件を彷彿とさせる。

 アメリカの黒人、特に男性は、自宅でくつろいでいる時でさえこのような事件に巻き込まれる可能性が他の人種より高いと言えそうだ。アメリカでは、今も目には見えない人種差別が根強く残っている。

Text by 川島 実佳