警官が黒人少年を射殺、米東部 現地黒人の長年の不満が爆発

AP Photo / Gene J. Puskar

 アントワン・ローズ・ジュニアという17歳の優秀な学生が、背後から頬と肘を銃撃されて死亡するという事件が発生した。その翌日、イースト・ピッツバーグ警察署には黒人の若者らが大挙して押し寄せた。

 その後数日間、大通りでは怒りに燃えた抗議活動が繰り広げられ、通勤時間に混乱が生じた。参加した人々は郡裁判所の階段から抗議の声をあげ、黒人の若者を殺害した白人警官の訴追を要求した。

 2013年頃より、黒人への暴力や差別を撤廃する国際的社会運動「ブラック・ライブス・マター」が広がっている。それ以降、ピッツバーグ地区でこのような事件が起きたのは今回が初めてであり、住民には衝撃が広がっている。ペンシルバニア州西部、鉄鋼業が盛んな地域の丘陵地帯で起きた今回の事件。この地域では、長年にわたって警察と散在する黒人コミュニティとの間で緊張状態が続いていた。それでも、丸腰の黒人男性の射殺によりデモ行進が続き、すぐさま警察官のマイケル・ロスフェルド容疑者が殺人罪で訴追されるというケースは類を見ない。

                                                                                                                 

 本事件の容疑者が有罪判決を受ける、という非常にレアな結末を期待しつつ、住民らは慎重に事件の行方を見守っている。

 2010年にアライアンス・フォー・ポリス・アカウンタビリティ(Alliance for Police Accountability)という団体を立ち上げたブランディ・フィッシャー氏は「政治情勢も違えば、声を上げる人々のエネルギーも違う」と話す。「冷血な殺人事件であり、この街の、今の世代がこんな事件を見るのは初めてだ」。

 事件から約2週間、メディアではメキシコ国境での移民問題が大きく取り上げられる中、抗議者らが声をあげたことで、国民の関心はピッツバーグに向けられている。デモ参加者の中にアル・シャープトン牧師やベン・クランプ弁護士といった著名人の姿はなく、その多くが地元住民であり、多様な人々だ。

 過去に同様の事件が起きたミズーリ州のファーガソンやバルティモア、クリーブランドとは異なり、アレゲニー郡の人種構成は白人が81%、黒人が13%だ。黒人の失業率や貧困率は、白人の3倍にも及ぶ。両コミュニティは、実際にはカラスが行き来できるほど近距離にあるものの、山や谷に囲まれた地形によって切り離されており、それも互いを孤立させている要因といえる。

 活動の主催者である24歳のトレサ・マーフィ氏は「これらの原因により、黒人社会の弱り疲れ切った風潮が作られている。我々が暮らすこの街では、我々の祖父母がやってきた頃から、黒人が体系的に圧迫されてきた」と話す。

 ピッツバーグから数マイル離れたイースト・ピッツバーグで起きたローズ少年殺害事件について話を聞いたところ、住民は地域の体系的な不公平さ、特に隔離と警察に関する話題を頻繁に口にする。

 この小規模区域では約1,800人が暮らし、黒人がその60%を占める。しかし、管轄する警察署の警官8名のほとんどが白人だ。ピッツバーグの警察署は、司法省の調査により過剰な暴力行動パターンなどの問題点が発覚し、1997年に初めて連邦同意判決を受けた。

 住民らは、その時代、黒人コミュニティにいる多くが怒りを抱えながらも、実際に行動に移すことはあまり一般的ではなかったと想起する。1995年のジョニー・ガンメージ事件が起きた際、その後の抗議運動は今よりもずっとおとなしかった。この事件では31歳の丸腰の黒人男性がブレントウッド郊外で、危険運転の疑いで警官に停められ、歩道に押さえ込まれた挙句に窒息死した。

 ピッツバーグのプロフットボールチームである「ピッツバーグ・スティーラーズ」のレイ・シールズ選手が、ガンメージ氏のいとこであったことから、この事件は大きなニュースとなった。関係する5人の警官のうち、2人が過失致死容疑で2度裁判にかけられたが、いずれも評決不能という結果で終了している。

 2012年には、ピッツバーグでレオン・フォード氏が運転中、停止標識を無視したとして停車させられたのち、胸を5発も撃たれるという事件が起きた。彼は一命をとりとめたものの、下半身不随という障害が残ってしまった。その際も怒りの行動が見られたが、ローズ少年事件のデモほどの規模には至らなかった。

 フォード氏も武器は所有しておらず、連邦訴訟でも賠償金550万ドルの判決が出た。しかし刑事裁判では、陪審員によって警察官1名の脅迫および暴行罪が免除され、他の警官が過剰な暴力行為を犯したどうかについての判決は、行き詰まりを見せた。

 ピッツバーグにあるユダ・フェローシップ・クリスチャン教会のシェネア・レオナルド牧師は水曜日に市街地で行われた抗議行進に参加した。彼は、ローズ少年事件に関しては地域の一体感が強いと感じている。

 「あれからずいぶん年月がたっているが、コミュニティの傷は消えていない」とレオナルド氏は言う。「目の前で起きていることは、正義ではない。我々の多くが、かつてなく疲弊しているのだ」。

 ロスフェルド容疑者の訴追措置が公表されてからも、抗議活動は続いている。コミュニティが法的プロセスに懸念を抱いているからだ。訴追に関しては歓迎しているものの、容疑者が出頭からわずか1時間以内に釈放されていることに、多くの人が憤りを感じている。

 フィッシャー氏は、「彼らがこの警官に優遇しようとしていることがわかる」と話す。「彼は家族とともに家にいる。一銭も支払うことなく刑務所から出られたのだ」。

 ローズ少年は6月19日、警察官に車を停められ、職務質問を受ける最中に逃亡、その後殺害された。その夜、隣接するノースブラッドドックで走行中の車からの発砲事件が発生しており、ローズ少年はその容疑がかけられた車両に乗っていたのだ。

 警察は水曜日、同じく逃亡を図った別の17歳少年を逮捕した。検察によると、その少年が車両発砲事件の犯人であり、ローズ少年は関与していなかったという。

 当局によると、ロスフェルド容疑者はローズ少年が武器を所有していたか否かについて、矛盾する供述をしているという。ロスフェルド容疑者の弁護士は、発砲は正当なものだったと確信しており、そして最大でも過失致死罪にとどまるべきだという考えを述べた。

 18歳のクリスチャン・カーター氏は、「銃による暴力や警察による黒人殺害を、常に身近に感じている」と話す。ピッツバーグ周辺での抗議活動に熱心に参加している彼は、人々は不安に煽られており、事態はすぐに収束するとは思えないと語った。

 カーター氏は、「我々が生まれ育ったアメリカでは、こういった死が日常的に起きる」という。「年配の人の多くは、前線にいる我々に何が起きるのか、恐れていると思う。しかし、これは私にとって重要なことであり、ここで終わりにしたいと思っているからこそ、活動を続けている。我々は、引き下がらない」。

By ERRIN HAINES WHACK, AP National Writer
Translated by isshi via Conyac

Text by AP

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