タイ洞窟:救助方法の選択肢は? 続く雨季、少年への潜水訓練は可能か

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 タイのチェンライ県のタムルアン洞窟に入った後、行方不明になっていた11~16歳のサッカーチームの選手12人とコーチが、捜索隊のダイバーによって洞窟入口から数キロ先の高台になった場所で発見された。現地は雨季に入っており、激しい降雨で洞窟の入り口が塞がれ、一行は洞窟の奥へ避難せざるを得なかったらしい。全員の無事が確認され関係者には安堵感が広がったが、浸水した洞窟からの救出は難航を極めている。

◆ようやく発見 関係者も一安心
 少年たちが発見されたのは7月2日で、行方不明になってから9日後だった。暗闇の中、岩棚の上で動けなくなっていた彼らを見つけたイギリス人ダイバーたちには、「ありがとう」のコーラスが鳴り響いたという。

 3日には医師や看護師を含む救助隊による健康チェックが行われ、食料が全員に与えられた。タイ海軍特殊部隊のAphakorn Yoo-kongkaew少将は記者会見で、どうやって少年たちを安全に救出するか計画中だとし、急がず彼らの体力の回復を待ってから、洞窟から脱出させるつもりだと述べた(BBC)。

◆潜るか待つか 少ない選択肢
 脱出と言っても、迷路のような洞窟の中は濁流で浸水しており、選択肢は少年たちに潜水させるか、水が引くまで待たせるかの2つしかないとされる。雨季が終わるのは数ヶ月先であることを考えれば、待たせることは理不尽だとジャーナリストのマイケル・サリバン氏は述べており、少年たちにダイビングを教えることがより現実的だとする(米公共ラジオ網NPR)。

 ただし洞窟内の状態は、ダイビングには不向きだと英洞窟救助会議(British Cave Rescue Council)の副会長、ビル・ホワイトハウス氏は指摘する。技術的な問題に加え、狭い場所を通り抜けさせることはリスクを伴うため、脱出法としては最も好ましくないとしている。ダイビング・コンサルタントのパット・モレット氏も、一般に認識されるダイビングと今回の場合は異なるとし、水はほぼ泥水で流れの早い場所もあり、方向感覚も失われると説明している(CNN)。

 多くのメディアが少年たちは泳げないと報じており、この点も問題を難しくしているようだ。ただ米空軍のジェシカ・テイト氏は、9日間食料もなく暗闇の中を耐えた彼らには生きようという意思があり、ダイビングに耐える勇気があることは証明されたと述べている(NPR)。スタンフォード大学の緊急医療専門家Paul Auerback教授も、少年たちが肉体的、精神的に耐えられるのであれば、ダイビングは無理な注文ではないとし、体調を万全にしたうえで、練習をさせることは問題ではないと見ている(CNN)。

◆雨季は続く 豪雨再来の危険も
 救助隊は洞窟の水をポンプで抜く作業を行っている。また、洞窟に続く別の入り口を探索中だが、いずれもうまくいっていないようだ。ドリルで洞窟の上に穴をあけ救出するという方法も考えられているが、少年たちがいるのは地上からかなり深く、しかも狭い場所であるため、非常に難しい作業になると見られている。

 報道によれば、タムルアン洞窟は雨季には定期的に浸水しているということだ。今後再び豪雨になるという予報もある。洞窟の水位が上がれば少年たちの居場所にまで水が迫ってくる危険性もあり、今後も予断を許さない状況だ。

Text by 山川 真智子