同性婚カップルへのケーキ販売拒否 米最高裁が店側を支持

マスターピース・ケーキショップのオーナーのジャック・フィリップス氏(AP Photo / David Zalubowski)

 米最高裁判所は今月4日、同性カップルにウエディングケーキの製造を拒否したコロラド州ケーキ店を支持する判決を下した。ただし企業が宗教上の理由から、ゲイやレズビアンに対するサービスを拒否することの是非という、より大きな問題については、審議を見送るとした。

 裁判所は、ケーキ店店主、ジャック・フィリップス氏の主張を、コロラド州人権委員会(Colorado Civil Rights Commission)に対する反宗教的偏見であるとして棄却。しかし判事らがその判決を覆した。投票の結果、9人中7人の判事が、同委員会の主張は、合衆国憲法修正第1条により保護されるフィリップス氏の人権侵害に当たるとした。

 今回の裁判に関し、かねてより様々な予測が飛び交っており、LGBTの権利を強く支持する判決が下される可能性や、裁判所が差別禁止法に初めて例外を認める可能性などが論じられた。この事案については、判事の意見が真っ二つに割れる恐れもあったが、リベラル派、保守派双方の判事から票を集める穏健な判決が下される結果となった。

                                                                                                                 

 アンソニー・ケネディ判事は、多数意見を支持した上で、より大きな問題に関する「議論を重ねていく必要がある」と述べた。他にも、今回の件と似たような訴訟が係争中だ。例えば花屋経営者が同性婚カップルへの花の販売を拒否した件が、最高裁判所で争われている。

 ケネディ氏は判決文で、今回の裁判について、「深い宗教的信条が不当に軽視されることのないよう、そして同性愛者の男性が、市販の商品やサービスを求める際に冷遇されることのないよう、寛容性を持って結論を出さなければならない」と述べた。

 裁判の当事者である同性婚カップルのチャーリー・クレイグ氏、デイヴィッド・マリンズ氏は、2012年、郊外のデンバーでフィリップス氏が経営するマスターピース・ケーキショップを訪れた。しかし、結婚式用のケーキの製造を、その場で拒否されたことを受け、コロラド州人権委員会に不服を申し立てた。コロラド州は法律上、同性同士の結婚を認めていない。そのため2人は、マサチューセッツ州で結婚していた。

 コロラド州法では、性的指向に対する偏見を、差別に当たるとして禁止している。フィリップス氏は、宗教的な立場から同性婚に反対していると主張したが、人権委員会は、ケーキの販売を拒否したことは州法に違反すると判断。同州裁判所も、委員会の決定を支持した。

 しかし昨年12月に判事らが双方の言い分を聞いたところ、委員会側の主張は、ケネディ判事いわく、宗教を軽視するものであり、同氏はすっかり不快な気持ちになったと言う。ケネディ氏は12月、委員会側には「フィリップス氏の宗教的信条に対し、寛容性も敬意も見られなかった」と述べた。

 そして今月4日になってもケネディ氏の考えは変わらず、「委員会には敵意があり、宗教的に中立な立場で法律を適用すべきとする修正第1条の規定に反する」と判決文に記した。

 リベラル派のステファン・ブレイヤー判事、エレナ・ケイガン判事は、保守派判事らの意見を支持する結論を出した。しかしそれと同時に、ケイガン氏は判決文で、判決に制限を設けるよう強く求めた。

 ルース・ベイダー・ギンスバーグ判事、ソニア・ソトマイヨール判事は、反対票を投じた。ギンスバーグ氏は、ケネディ判事がゲイの人権保護を繰り返し訴えたことを取り上げ、「裁判所の判決には支持できるところも十分にある」と記した。「しかしクレイグ氏とマリンズ氏を敗訴とする裁判所の判決には、断固反対する」

 トランプ政権は、フィリップス氏の訴えを支持してこの裁判に介入した。ジェフ・セッションズ法務長官は、裁判所の判決に喜びを表明し、「修正第1条は、政府が宗教的信条に対する偏見により、市民を差別することを禁じている。コロラド州人権委員会は、フィリップス氏の宗教的信条に対する寛容性と敬意を欠いており、最高裁判所は然るべき判決を下した」と述べた。

 ドナルド・トランプ大統領は、この判決に対し、珍しく曖昧な態度を示している。判決が言い渡されてから11時間以上遅れて、「偉大なる最高裁判所が今、ケーキ店を支持する判決を!」とツイートするにとどまった。

 フィリップス氏の裁判で議論に参加していた「自由を守る連盟(Alliance Defending Freedom)」のクリステン・ワゴナー上級顧問は、フィリップス氏の信仰に基づく結婚観に対する人権委員会のあからさまな敵意を、最高裁判所が糾弾したことは正しい判断だと述べた。

 ワゴナー氏によると、フィリップス氏は来店したどの客にも意欲的に、既成品のケーキを販売している。しかし「深い信仰心に反するイベントにメッセージを送ったり、それを祝福したりすることを拒否したに過ぎない」。

 フィリップス氏は4日朝、ケーキ店で、電話への対応に追われていた。店のケーキ職人など、彼を支援する友人・知人から、次々と祝福を受けた。バルーンを届けに来た女性もいれば、ハグを贈る者もいた。

 法廷で同性婚カップルの代理人を務めたアメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union, ACLU)は、裁判所が宗教全般を理由に、差別禁止法に例外を認めようとしなかったというのは、喜ばしいことだと述べた。

 ACLUのLGBT & HIVプロジェクトの代表を務めるジェームズ・エセックス氏は、「判決文を読んだところ、裁判所が長きに渡り人権保護に尽力してきたこと、そして各州には、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーを含むすべてのアメリカ国民を守る力があるという事実を再確認できる判決だと思う」と言う。

 ワゴナー氏、エセックス氏は、フィリップス氏のウエディングケーキ販売業が、判決を受け何らかの影響を受けるようなことはないだろうと言う。ワゴナー氏の見解では、今回クライアントとなったフィリップス氏は、今後、同性婚カップルにウエディングケーキの製造を依頼されても、訴えられることなど心配せずに拒否できる。しかしエセックス氏は、他の同性婚カップルがフィリップス氏にウエディングケーキを依頼した場合、「マスターピース・ケーキショップは客を追い返して構わないとする根拠はない」と言う。

 原告のひとりであるクレイグ氏は4日夜、今後も差別と闘い続けると声明を発表した。コロラド州議会議事堂で行われた議論の中で、クレイグ氏は支援者に対し、「『当店は、あなたのような人にサービスを提供しない』などと侮辱され、困惑し、辱められるようなことが、誰の身にもあってはならないと思い」、パートナーと共に訴訟を起こしたと語っていた。

 フィリップス氏の裁判の他にも、結婚式関連のサービスについて係争中の訴訟がいくつかある。企業側では花屋、映像プロデューサー、グラフィックアーティストらが、宗教的な立場から同性婚に反対し、同性婚カップルの結婚式への協力を拒否している。

 ワシントン州リッチランドで花屋を経営するバロネール・ステュッツマン氏は、結婚を控えた男性同士のカップルに結婚式用の花を販売することを拒否したが、それが州法に違反するとした州最高裁判所の判決を不服とし、上訴した。

 ステュッツマン氏の上訴については、6月末までに判事らの結論がまとまる予定だ。

By MARK SHERMAN, Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP

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