韓国、科学分野のノーベル賞を取れない理由を調査 日本との違いにも注目

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◆長期間研究できる環境が整っていない
 韓国研究財団は、2000年代以降、自然科学分野で米国の次に多い16人のノーベル賞受賞者を輩出した日本にも注目してきた。2015年にニュートリノ振動を発見したとしてノーベル物理学賞を受賞した東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章教授はじめ、日本人受賞者のほとんどが学生時代に出会った科学に刺激を受け、大学・大学院へ進学してから本格的に研究を始めたと詳細に報告した。

 特に「学校の教師や大学教授の指導と役割が大きかった」ことに注目したようだ。日本人受賞者16人のうち14人が30歳前に大学や研究所に入り、早いうちから安定した研究環境で研究を開始したことが現在のノーベル賞ラッシュにつながっていると分析した。韓国紙の中央日報も「日本の強みは、研究者が若いうちから長期間の研究を継続することができる文化があることだ」とした。

 一方、韓国では研究を長期間後押しする環境が整っていない。また、研究課題は科学者が自発的に決めるのではなく、政府が決定して発注する方式であり、さらに短期間で結果を出さなければならないという。ソウルのある大学の物理学科教授は「韓国の場合、博士号取得後は30代後半で研究ができる安定したポジションに就き、40代中盤になってようやく自分の研究を始める」とし、「20、30代で研究を開始する海外と比べてあまりに遅れている」と批判した(韓国経済新聞)。

 人類の発展に多大な功績を残した人物に贈られるノーベル賞は、一朝一夕の研究で受賞するのは難しい。子どもたちが純粋に科学に興味を抱き、国の発展につながる成果が出なくとも、長期的に研究を後押しする環境整備が今の韓国科学界に必要なようだ。

Text by 古久澤直樹