大気汚染が都市犯罪を増加させる背景を解明する
◆ストレス要因
質の悪い空気への暴露は、リスク認識に影響を及ぼすストレスホルモンのコルチゾールを増加させる。高レベルのリスクテイキング(リスクを軽く考えること)は大気汚染度が高い日に犯罪行為が増加する理由のひとつだ。大気汚染の削減が犯罪の削減につながるだろうと研究者は結論づけている。
しかし、ほかの社会的要因や環境要因も人々の行動に影響を及ぼす可能性がある。割れた窓ガラスや落書きなどの環境要因は、社会的及び道徳的混乱を誘発するおそれがある。割れ窓理論(Broken Window Theory)では、乱暴行為と軽犯罪行為の兆候はその行為を波及させ、さらなる乱暴行為と軽犯罪行為を生むと説明している。
これらの大気汚染による影響は広く知られている健康と環境への影響を上回るものであることが次第に明らかになっている。しかし、多くの国で大気汚染レベルがいまだに高いのが現状だ。世界保健機構(World Health Organisation: WHO)によると、世界人口のが現在、有害な空気を吸っているという。
個々の大気汚染物質が健康と行動にどのような影響を及ぼすか、また、性別、年齢、階級、収入、地理的な位置によってどのように異なるかについては、解明されていないことがまだ多い。高レベルの大気汚染とある種の行為の増加の関連により強固な因果関係を見出すには、より確固たる証拠が必要だ。
しかし、質の悪い空気は身体面でも精神面でも健康に害を及ぼすという証拠は十分にある。より持続可能な輸送機関、効率的で再生可能なエネルギー生産と利用、廃棄物管理の方法を開発してこの問題を解決するには、国と地方自治体による協調行動が不可欠だ。
国連のBreatheLifeキャンペーンでは現在、最低でもマラソンと同じ距離(約42キロメートル)を一ヶ月間自動車は自宅に置いて代わりの手段で移動するよう市民に呼びかけている。私たちみなが、誰もがきれいな空気を吸え、より身体的、精神的、社会的に健康になるための役割を担っているのだ。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Naoko Nozawa