アメリカの新生児激減、過去30年で最低 経済好調も 出生率は1.76に

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 アメリカは、先進国のなかでも比較的出生率の高い国だが、2017年に生まれた新生児の数が激減している。原因を特定するのは難しいが、女性の社会進出や景気の影響などが上げられている。すでに日本やドイツ、イタリアでは少子高齢化、人口減少が始まっているが、アメリカも同様の状況になるのではと懸念する声もある。

◆赤ちゃん激減。アメリカに何が起きた?
 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が発表した暫定データで、2017年に生まれた新生児の数が1987年以来最低となったことが分かった。出生率は2014年から低下しているが、2017年の出生数は前年から9万2000人も減っており、これまでで最大の減少となった。

                                                                                                                 

 人口が長期的に安定する人口置換水準は2.1だが、2017年のアメリカの合計特殊出生率は1.76まで落ちている。政治専門紙ザ・ヒルに寄稿したコロンビア大学とイリノイ大学の研究者によれば、20世紀初頭の合計特殊出生率は3.0であったが、1940年代には人口置換水準の2.1まで低下した。ピークは第二次大戦後のベビーブームで、3.7を記録。しかし1970年代から急速に下落して、比較的安定した低いレベルで推移してきた。

◆40代の出産のみ増加 出産の先延ばし進む
 CDCのデータは、15才~44才の女性を対象にしたものだが、適切な避妊方法の普及もあり、10代の出産は2007年以来55%も減少している。20代の出産は4%の減少となり、記録的な低さとなった。30代では微減しているが、40代では昨年と比べ2%の増加となっており、1980年代から増加傾向が続いている。

 ピュー研究所のグレッチェン・リビングストン氏は、明らかに女性が子供を持つ年齢を遅らせていると述べる。長期的には女性の高学歴化、社会進出、晩婚化などが出生率に影響すると説明している(CNN)。

 メリーランド大学のフィリップ・コーエン氏は、家族を持つために女性はよりよい経済的足場を持とうとすると述べる。出産で失う物が多い女性は、計画と予防に投資し、出産を遅らせ子供の数も少なくすると述べる。出産を遅らせる女性が増えるほど、子ども全体の数は減ってしまう(Vox)。

◆過去の不況も原因 若い世代の出生率アップに期待
 リビングストン氏は短期的には経済状況が出生率に影響することも指摘しているが、ブルームバーグは2008年に始まった不景気の影響を上げている。教育を受け、キャリアを築いて経済的状況を整えた後、結婚しマイホームを手に入れるまでが子作りの準備だが、多くの人々が家を買うほどの資金がしばらくなかったと述べ、これが出生率の低下に影響したと見ている。

 このところ景気は回復し、2017年では25~29才、30~34才、35~39才のすべての年齢グループで、持ち家率は上昇している。1980年代前半から中頃までに生まれたミレニアル世代では手遅れかもしれないが、彼らの10年後、またはそれ以後に生まれた世代は、経済状況の好転を受け、より多くの子供を持つ可能性もあるとしている。

◆日本レベルは危険 求められる早めの対策
 もっともAPによると、30代の女性の出生率は少なくともここ50年は安定して高いレベルまで上昇し、近年では30代前半の出産が最も多くなっていた。そういった理由から、ペンシルバニア大学のハンス・ピーター・コーラー氏は、急激な出生数の減少が根本的な変化なのか、一時的なものなのかを判断するのは、現時点では難しいと話している。

 Voxは、他の先進国に比べアメリカの出生率はまだ高い方であり、パニックになる必要はないと述べる。しかし日本やイタリアぐらいの低い出生率に近づき始めれば、高齢化、労働力不足などの問題は避けられなくなるとし、今後は人口動態的変化に対応する政策作りが必要だとしている。

Text by 山川 真智子

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