メーガン妃は「変化の象徴」? 黒人社会が結婚報道に抱いた違和感

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 イギリスのハリー王子アメリカ人女優のメーガン・マークルさんが19日に結婚式を挙げた。アフリカ系の母親を持つメーガン妃は、黒人の血を受け入れた英王室、イギリス社会の変化の象徴のように報じられている。しかし黒人社会からは、メーガン妃の王室入りが人種問題を変えるわけではないという冷めた意見も聞かれる。一方メーガン妃は自身を黒人と白人の両方の血を受け継ぐ「バイレイシャル」と公言しており、人種の異なる両親を持つ多くの若者のお手本となりそうだ。

◆新婦のルーツを強調した式 黒人社会は辛口批評
 ガーディアン紙は、黒人牧師の熱い説教、期待の黒人チェロ奏者の見事な演奏、そして黒人ゴスペル聖歌隊のスピリチュアルな歌声をフィーチャーした先のロイヤル・ウェディングは、メーガン妃のルーツを意識した象徴的な式であったと述べる。多くのメディアが、英王室の変化を強調した。

 しかし、「アフリカ系の王室入り」を強調する報道には、イギリスの黒人社会から辛口の意見も聞かれる。一部の黒人市民はガーディアン紙に対し、ブレグジットを控えヘイトクライムも増え、ウィンドラッシュ事件(旧イギリス領から戦後移住してきた人々を政府が不法移民と見なした問題)もあって、多文化社会の未来に疑問符が付いていると述べた。結婚式は希望に満ちていたが、浮かれている場合ではないとも話している。

 バーミンガム・シティ大学の社会学教授、ケヒンディ・アンドリューズ氏は、メーガン妃の王室入りで王室が変わるという考えには問題があるとし、ポスト人種問題時代が到来すると期待するのは危険だと述べる。同氏のブラック・スタディーズのクラスでは、メーガン妃が象徴するのは例外主義、形式だけの平等主義だという声が上がったという(英スカイ・ニュース)。

◆白人寄りの容姿は得? バイレイシャルならではの悩みも
 人種融合の象徴のように、メーガン妃を持ち上げる側に不快感を示す声もある。ジャーナリストで自身も混血であるジョージア・チャンバー氏は、メーガン妃はメディアが欲しがる黒人女性で、アフロヘアーで「怒れる黒人女性」と見なされる「欠陥バージョン」ではないと皮肉を述べる。また、容姿から白人として通ることもあり、肌の色も薄いため、肌の色が濃い人々と同じ差別を受けることもないと指摘する。結局、メーガン妃の肌の色が濃ければ、王子との結婚は認められなかっただろうというのが、チャンバー氏の主張だ(スカイ・ニュース)。

 米ウェブ誌『Vox』に寄稿した社会心理学者のサラ・E・ガイサー氏も、白人寄りの「バイレイシャル」のほうが、人種差別を受けることが少ないことには同意している。ただ、アメリカは黒人の血が少しでも混じっていれば黒人と見なす時代を経ており、今でも依然として一つの人種に属していることが求められるという。それゆえ、見た目にかかわらず、人種的に曖昧なバイレイシャルの立場は厳しいとしている。アフリカ系アメリカ人向けのサイト『Black Enterprise』は、マライア・キャリーからオバマ大統領まで、バイレイシャルな有名人はたくさんいるが、求められるがゆえに、人種として黒人を選ぶことが多いと指摘している。

◆二つのルーツを誇るメーガン妃 人種問題の解決は重荷
 一方メーガン妃は結婚式で大胆に生まれ持った黒人らしさを祝ったが、自分が黒人なのか白人なのかには言及しておらず、どちらかに決めろというプレッシャーに抵抗してきたとBlack Enterpriseは述べる。バイレイシャルとなる自分の子供たちのためにも、今後も多人種アイデンティティを持つ役目を果たしていくだろうとしている。

 自身も白人と黒人の親を持つガイサー氏は、自分を「バイレイシャル」と公言するメーガン妃こそ、求めていたキャラクターだと述べる。そしてアフリカ系の血を引くメーガン妃をブラック・プリンセスとして祝いつつも、異なる人種の両親を持ち、人種的曖昧さに悩む若者たちにとっての、バイレイシャル・プリンセスとしても祝福したいと述べている。

 メディアがメーガン妃のルーツを強調するなか、アフリカ系女性で作家のYomi Adegoke氏は、愛する人と結婚したばかりの新しい王族に、プレッシャーを与えるなと述べる。これまでメーガン妃の人種について、がっかりするような報道があったことも指摘し、人種問題の改善やポスト人種社会の実現を彼女に求めるべきではないと述べている(スカイ・ニュース)。

Text by 山川 真智子