4月20日は「マリファナの日」 米国でかつてない盛り上がりを見せた理由

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 4月20日がマリファナの日になった背景には、70年代のカリフォルニアの高校生の集団が、放課後4時20分にマリファナを探すために集まっていたという都市伝説から、420(フォー・トゥエンティと発音する)という三桁の数字が、マリファナのことを指すコードになり、そこからいつしか4時20分がマリファナの時間、4月20日がマリファナの日となった、というストーリーがある。

 特に娯楽用のマリファナを合法化する法案を2012年に通していたコロラド州で、マリファナの販売が2014年に始まり、以降、次々とマリファナの合法化や非犯罪化に乗り出す州が出てくるにつれ、マリファナを軸とした文化イベントやパーティが堂々と行われるようになった。今年の4月20日も各地でイベントが活発に開催された。

                                                                                                                 

4月20日はマリファナの日、全米各地で音楽やアートのイベントが行われる日になった。

 天然の植物でありながら、1930年代に禁酒法の廃止からスライドする形でアメリカでは取締りの対象となったマリファナ(大麻草)であるが、2018年4月現在、医療目的のマリファナ使用が半数以上の29州で、娯楽目的のマリファナ使用が9州で合法化されている。またマリファナ使用は合法とはいかないまでも、軽犯罪扱いする「非犯罪化」の法案が13州で成立している。1996年にカリフォルニア州で医療のためのマリファナ使用が許可されて以来、少しずつ合法化の方向に向かってきたのである。

 世論調査を専門とするピュー・リサーチ・センターが1969年から行っている調査では、マリファナに対する世論は2000年代に入ってからどんどん好転し、2017年には、国民の61%がマリファナを合法化するべきとの意見を表明している

 アメリカの世論が、マリファナへの取締りをやめ、個人の権利で使用して良い物質として扱う方向に傾いている背景には数多くの要因がある。マリファナの「害」や「効果」への理解が広がっていること、少量のマリファナ使用で逮捕される人たちが刑務所の運営を圧迫していること、ニクソン大統領時代に始まった対ドラッグ戦争がコストのわりに成果が出ていないという認識が広まったこと、などである。また、2008年に始まった金融危機による州・自治体レベルの財政悪化もひとつの要因となった。たとえば2012年に通過したコロラド州の合法化法案には、マリファナを合法化することで生まれる税収を、公立学校の予算にまわすという条件が含まれていた。

 一方で、世論が明らかに「合法化」の方向に傾き、州レベルで「合法化」と「非犯罪化」が進んでいたとしても、これまでは大きな障害がひとつ存在していた。連邦政府の薬物指定では、いわゆる「麻薬」を指定する「スケジュール1」のリストに、マリファナがヘロインやLSDなどと並んで入っていることである。そのため、カリフォルニアが医療目的のマリファナ栽培や使用を州レベルで合法化したあとも、連邦政府の麻薬取締局(DEA)が取締りを続行するという、州と連邦政府の政策の違いによる軋轢が生じていた。

 オバマ大統領時代の2013年に、ジェームズ・コール司法副長官が執筆した「コール・メモ」を通じて、連邦政府としてはマリファナを「違法の危険物質」と定めるが、栽培、所持、使用を合法化、または非犯罪化する法案を通過している州や自治体について、連邦政府が「踏み込まない」という事実上の意思表示をした。これは、歴史的な連邦政府による政策の転換と受け取られていたのだが、トランプ政権発足後に、南部の保守的なアラバマ州出身のジェフ・セッションズ司法長官が、連邦政府の方針をシフトする意向を示した。

 とはいえ、コロラド州が合法化してからマリファナのまわりには急ピッチで業界が形成され、現在いわばバブル的状態にある業界を考えると、時計の針を戻すことは難しいとの見方もあった。業界の動向を調査するアークビュー・マーケット・リサーチでは、2017年には92億ドルと推測されたマリファナの売上が、今後10年で470億ドルにまで増加すると見込んでいる。これに、栽培用の機器やパッケージ、雇用などを考えると経済効果は爆発的である。

 と前置きが長くなったが、そのような状況のなか、今年4月20日の直前に、「山が動いた」ことを示す出来事がいくつかおきた。ひとつは、ニューヨーク州の民主党議員で、上院の院内総務であるチャック・シューマーがその前日にVice Newsのインタビューに応え、これまでの意見を翻してマリファナ所持の非犯罪化を支持する意見を出したこと、そして、トランプ政権がコロラド州と政治取引し、司法省の人事をめぐる賛成票と引き換えに州のマリファナ政策に手を出さないと約束したことなどである。

 またさらに、2015年まで下院の議長を務めた元共和党議員のジョン・ベーナーが、マリファナ業界のロビイストになったことなども明らかになり、いよいよ連邦政府が「スケジュール1」からマリファナを外すのではないかという憶測も流れるようになった。そのようなわけで、今年の4月20日はいつも以上に盛り上がりを見せたようである。

 アメリカでは今年11月に、トランプ政権になって初めての中間選挙が行われるが、苛烈な選挙戦が予想されている。ミレニアルやジェネレーションXをターゲットとする民主党側の候補の多くがマリファナの合法化をキャンペーンの軸に据えている。マリファナ問題がこれからのアメリカ政治の軸のひとつになりそうだ。

Text by 佐久間 裕美子

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