「男性のみ」求人広告に見る中国の性差別 人権団体が報告

ラッシュ時のバスの窓から外を眺め、通勤する女性たち(AP Photo / Andy Wong)

 中国の求人広告—高速鉄道乗務員の求人では「オシャレで美人」な人材が求められ、男性をターゲットとした求人広告ではポールダンスを披露する女性社員の写真が掲載される。

 4月23日、人権団体によって中国の労働市場で性差別が蔓延している旨が報告された。公然と男性のみを募集する求人広告や女性社員の魅力を振りかざす広告が散見する現状だ。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチは2013年から2018年にわたり公開された一般企業及び政府を含む3万6千件以上の求人広告を調査した上で「男性応募しか受け付けない—中国求人広告に見られる性差別」と題した報告書を発表した。

                                                                                                                 

「性差別的な求人広告は、中国企業内にいまだ残る時代遅れの固定観念に追随するものです」ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国部局長ソフィー・リチャードソン氏はこう述べた。「こういった企業は自らが中国の近代化や進展に貢献してきたという自負を抱いている一方で、このような(時代遅れの)求人戦略を用いているのです」

 中国では採用及び求人広告の双方において差別を禁止しているが、実際の規制は緩いものである。HRWの報告書によると、政府機関においてもこの規制が遵守されていないことが確認されており、昨年度の公安部の求人広告のうち55%のものでは「男性のみ」という条件が明記されていた。この件に対し公安部にコメントを求めたものの、現時点で返答は得られていない。

 雇用における性差別は、女性の労働率および給与水準を悪化させている。公表されたデータによると、都市部の女性労働者の所得は(政府による経済への介入が緩やかであった)1990年では男性労働者の78%だったが、2010年には67%に落ち込んでいる。

 同報告書は、この雇用における性差別には「深く根付いた差別的女性観」—女性は男性よりも能力が低い、また家庭を持つことで仕事を辞める場合があるように、女性は男性ほど仕事に全力を傾けない―といったものが反映されていると記している。

 またテック企業に関して調査を行ったところ、男性志望者の増加を推進する手段として、魅力ある同僚女性社員の存在を利用する事例が多く見られることも同報告書によって指摘された。

 その例として挙げられたのが、オンラインショッピングの大手アリババがソーシャルメディア上において2013年に展開した「ポールダンスをするなどセクシュアルなポーズを取った」女性社員の写真を掲載し、自社女性社員の様子について列記した広告であった。

 なお、この件についてアリババにコメントを求めたが、現時点で返答は得られてない。

 さらに露骨なものもあった。テック企業テンセントが2016年にソーシャルメディア上に掲載した採用広告では、「私がテンセントに入社した理由は本能的な衝動に端を発しています。何と言っても面接担当だった人事の女性がとてもかわいかったのです」という男性社員のコメントが載せられていた。

 同広告についてテンセントは謝罪、同社は各々の多様性を重視し、才能・能力に基づいた人材登用を行っているとコメントした。同社は「こういった事例は、決して我々の価値観を反映したものではありません。これら事例についてはすでに調査を開始しており、即座に対策を進めております。このような事態が生じたことを遺憾に思い、同様の事態が二度と起きぬよう迅速に対応してまいります」とメールでコメントしている。

 求人に際して性的対象化が行われている事例は他にも存在する。法によって規制されているにも関わらず、職務とは何ら関係のない身体的特徴が要求されるケースも頻繁に見られるのだ。身長・体重や、「一般的な目鼻立ち」、また声の特徴などで制限を設けるものである。

 その顕著な例として同報告書では、中国北部で展開された「おしゃれで美人な高速鉄道乗務員」を募集する広告が挙げられている。

 また、同報告書は中華全国婦女連合が2014年に行った研究を引用し、大卒女性の87%が就職活動中に何らかの形で性差別を経験したと語っていることを指摘している。

 同連合の調査によると、求人広告における性差別として、「男性のみ可、または男性優遇」や「女性志望者の選考お断り」、「女性志望者に関してはより一層の高学歴を要求」といった文言が見受けられるという。

 一方で、行政事務、また幼稚園や小学校の教師といった女性が大部分を占める分野では、男女比のバランスを取るために男性が優遇される場合もある、と同報告書は指摘している。
 
 引用されている匿名の幼稚園園長の発言によると、男性が不足することで園児たちのトラブルに対する接し方やその解決法が女性的になっている、とのことであった。

 上述の姿勢・見解を改善していくことは難しく、また中国の権威主義的政治が障害となり法規制の実施が行き届いていないことが状況の改善を妨げていると同報告書は指摘する。

「中国政府は女性の権利に関する活動家を抑圧・投獄するのではなく、共に協力して求人市場及びその先にある性差別を解決していくべきです」とリチャードソン氏は語る。

 性差別は中国の政治における圧倒的なまでの男性的体質にも見て取れる、と語るのは中国社会科学院所属の社会学者・李銀河氏だ。氏によると、女性が職務につくのが危険な国もあるとの理由で、女性が外交団から除外される場合もあるのだという。

 氏はこう語る。「世界有数の資産家となった中国人女性起業家の数は少なくはありません。しかし、政治の世界となるとひどいものです。女性たちの進出が遅かった、というのが理由でしょう。政治の実権が男性たちの手中にあり、それゆえ社会が男性中心のものとなっているのです」

By CHRISTOPHER BODEEN, Associated Press
Translated by So Suzuki

Text by AP

Recommends