「土俵下りて」問題、海外の視線は角界の体質よりも日本の性差別へ

J. Henning Buchholz / Shutterstock.com

 大相撲の春巡業で、挨拶のため土俵に上がった舞鶴市長が突然倒れ、救命措置に駆け付けた女性が行司から土俵を下りるよう求められた。その後相撲協会から謝罪はあったが、土俵は女人禁制という理由で善意を拒んだこの事件は、人命より伝統を取るのかという批判を呼んでいる。さらに海外では、融通の利かない相撲界の体質に加え、日本で根強い「性差別」を紹介する例として、主要メディアが報じている。

◆事件の動画拡散。相撲界への批判相次ぐ
 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)CNNは、この事件を撮影したビデオがソーシャルメディアやテレビで広がったことで、日本国内で大きな注目を集めたと報じている。「人命より伝統優先なのか」、「一刻を争う事態に、信じられない発言」、「ばかげた日本的価値を示した事件」など、ソーシャルメディア上では、女性に土俵を下りるようアナウンスしたことに批判が集まったとしている。テレグラフ紙は、「人命より伝統が大切なら相撲協会など滅んでしまえ」、「女性が不浄と言うばかげた相撲協会などなくなれ」というソーシャルメディアの相撲界への批判を紹介している。

 各メディアは、最近相撲界で不祥事が多発していることなどにも触れ、相撲界の体質に問題があることを示唆している。早稲田大学スポーツ科学学術院の武藤泰明教授は、不祥事後もチケットは売れ、相撲人気は衰えていないと指摘し、外からのプレッシャーなしでは相撲界の改革につながらない、とワシントン・ポスト紙(WP)に語っている。

Text by 山川 真智子