キリスト教への信仰心が消える欧州 ムスリムも増加で変わる宗教地図

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◆アイデンティティとしてのキリスト教は受け継がれない
 欧州ではキリスト教が文化や生活習慣に影響を与えてきたが、それも薄れつつある。ポーランド、ポルトガル、アイルランドでは、10%以上が週一度は礼拝に参加すると答えたが、チェコでは70%が一度も教会、または礼拝所に行っていないと答え、80%がお祈りをしたことがないと答えた。イギリス、フランス、ベルギー、スペインでも、56~60%が教会に行かない、63~66%がお祈りをしないと回答している。

 ブリヴァント教授は、多くの若いヨーロッパ人は、「洗礼は受けるものの、二度と教会に足を踏み入れなくなるだろう。文化的宗教的アイデンティティは、親から子へ受け継がれていない」と述べている。キリスト教がデフォルトであった時代は終わり、新しいデフォルトは「無宗教」だと同氏は述べる。また、今後20~30年の間に、主流教会の規模は縮小し、わずかな信者だけが教会に深く関与し続けることになると述べている(ガーディアン紙)。

◆増えるムスリム。未来の欧州は聖戦の舞台に?
 今回の調査では、自分の宗教をイスラム教だとする若者も各国で目立った。例えばフランスでは、10%がイスラム教徒だと答えており、これはプロテスタントの2%よりも多い。イギリスでは、6%はイスラム教徒だと答えており、今後国教会信者を上回るのも時間の問題かもしれないとエコノミスト誌は述べる。ブリヴァント教授は、一般にイスラム教徒のほうが、出生率が高く宗教を保持する割合も高いと解説している(ガーディアン紙)。

 欧州からキリスト教徒が減っているという認識は、イスラム世界でも持たれおり、米シンクタンク、ゲートストーン研究所に寄稿したUzay Bulut氏は、トルコの政治家、アルパスラン・カヴァクルオール氏のショッキングな発言を紹介している。

 カヴァクルオール氏は、欧州は人口も減り高齢化しているため、仕事を求める外国人が流入しているが、新たに来るのはムスリムばかりで、そのうちムスリム人口がキリスト教徒を上回るとしている。反発は起きるが解決策はなく、欧州のイスラム化は確実だと語っている。

 Bulut氏によれば、2017年にトルコのエルドラン大統領は、欧州に住むトルコ人に、現地で根を張って子供をたくさん作り、欧州の未来になるようにと呼びかけたということだ。これはまさに人口動態的ジハードだとし、人の流入に合わせ、欧州全土にモスクが建設されていることも指摘している。

 米ピュー研究所によれば、欧州のムスリム人口は2010年の1950万人(全体の3.8%)から、2016年には2580万人(全体の4.9%)にまで増えており、今後ムスリム移民の流入がゼロになったとしても、出生率の高さから、2050年には全体の7.4%を占めるまでに増加するとされている。

Text by 山川 真智子