韓国の出生率、過去最低の1.05に ソウルは0.84と深刻

anekoho / Shutterstock.com

 韓国で出生児数の低下が深刻化している。昨年1年間の出生児数は過去最低となる35.7万人で、合計特殊出生率は1.05を記録した。主要各紙は数年以内に国家的災難が到来するのではないかと報じた。現在韓国では雇用環境が過去最悪のうえ晩婚化や婚姻件数の減少が重なっている。朝鮮日報は2005年に日本で出生率が過去最低となった「1.26ショック」を引き合いに出し、日本以上に少子化が進行していると論じた。また、5〜7年以内に新生児数が20万人台にまで減少するとの予測も出ており、少子化対策を根本から見直すべきという声も強まっている。

◆急激な出生数低下、失業率の悪化が原因か
 韓国統計庁が行った人口動向調査によると、新生児数は昨年より約5万人減少して35万7700人となり過去最低となった。1970年代に100万人だった出生児は2002年には半分以下の49万人に減少。2010年から2012年はわずかに回復したものの、以降は再び悪化し、5年間で10万人以上の減少となった。

 女性が一生のうちに産む数である合計特殊出生率も過去最低だ。経済協力開発機構(OECD)の平均1.68を大きく下回る1.05となった。出生率低下の原因は、出産が最も活発とされる30代前半女性の出生率低下が最も影響したと見られている。10万人あたりの30代前半女性の出生率は過去4年間、110人を維持してきたが、昨年は97人に急落した(韓国日報)。

 また、失業率の悪化も大きい。韓国では若年失業率が4年連続で悪化するなど問題が深刻化している。雇用改善のために打ち出した公務員採用の拡大策も裏目に出てしまい、根本的な青年失業の解決には至っていない。その結果、昨年の婚姻件数は26万4600件で2011年から約6万件の減少となった。調査を行った統計庁担当者は「景気の悪化や住宅価格の高騰、青年失業などで出生率は低くなる傾向がある」(聯合ニュース)と話した。

◆ソウルの出生率0.84
 さらに酷いのは首都ソウルだ。ソウルの合計特殊出生率は0.84と全体平均よりさらに大きく下回った。朝鮮日報は、過去にソウルの0.84を下回った都市国家は2003年と2004年のマカオであるとした。しかし、いずれも10年以上前のことであるうえ現在は1.2台に回復しており、単純比較することはできない。人口1000万人を超える大都市で出生率1を切る国は世界的にも珍しく、漢陽(ハニャン)大学のイ・サムシク教授は「保育費支援などの少子化対策には限界がある」「結婚して子供を生み育てやすい社会に変える対策が必要になる」(朝鮮日報)と話す。

 なお、合計特殊出生率が最も高かったのは特別自治市の世宗(セジョン)で1.67人、次いで韓国南西部の全羅南道(チョルラナムド)で1.33人、済州(チェジュ)で1.31人と続いた。

 日本以上に少子化が深刻化している韓国。朝鮮放送ではガラガラの産婦人科や新生児室の様子が映し出され、その深刻さを物語った。先進国が経験したことのない国難に韓国はどのように立ち向かうのか。少子化政策の本気度が試されている。

Text by 古久澤直樹