なぜフランスの出生率が低下? 充実した子育て支援も3年連続減

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◆出産適齢期が上がった?出産年齢にある女性も減少
 エコノミスト誌が最も説明がつく理由として上げるのは、フランス人女性が出産を遅らせていることだ。母親の出産年齢の平均は10年前と比べほぼ1歳上がって30歳を超えた。勉強や安定した職を探すのに時間をかける女性も多く、25~29歳の女性の出産も減っている。35歳以上の出産の増加は見られないが、40~49歳ではわずかに増加しており、同誌は今後年齢の高い女性が、出生率の回復に貢献する可能性もあるとしている。

 これに対し欧州のニュースサイト『The Local』の英語版は、1946年から1964年のベビーブームに生まれた女性が出産を終えた1990年代から、20~40歳の女性が減ってきていると指摘する。出産年齢にある女性の数自体が減少していることが、出生率低下の原因の一つだとしている。

◆緊縮財政のせい?理由の特定は困難
 The Localは、最近政府の予算自体が厳しくなっていることも原因だとしている。例えば2012年以来、託児スペースは約束された27万5000件に対し、5万件以下しか建設されていない。このころから始まった予算削減の影響が2016年から感じられ始め、2017年にはさらに増大したと、ソルボンヌ大学のジェラール-フランソワ・デュモン教授は述べる。補助金が減り託児所建設に自治体が消極的になったことで、仕事と家庭の調整に困る世帯が増えたと指摘している。

 フランス国立人口研究所の人口統計専門家、ロラン・トゥルモン氏は、フランスは包括的な家族政策を取り、国が全ての家族を援助するという考えだったが、この構造の崩壊が、フランス人の自信に影響を及ぼしているかもしれないと述べている(The Local)。

 一方ソルボンヌ大学の人口専門家、ロラン・シャラール氏は、出生率の変化は「個人的決定に基づくものであり、メンタリティの変化と関連している」と述べ、説明的モデルはなく、理由の特定は難しいとしている。

Text by 山川 真智子