温暖化でやせ細るホッキョクグマ 密着カメラで見えたその生態
一部のホッキョクグマは、体重を増やすべき時期に逆に体重を落としている。このような新たな調査結果が出た。気候変動に起因するこのダイエットは非常に不健全だと科学者たちは指摘する。
ホッキョクグマが毎年春にアザラシを狩るのに必要な北極海の氷の被覆が減少しており、これは地球温暖化に起因すると研究者たちは考えている。
調査を進めるため、研究者たちは、9頭のメスのホッキョクグマを対象に、3年続けて春の時期に小型のビデオカメラと人間で言うところのヘルスモニター「フィットビット」に相当する機器をつけた追跡カラー(首輪)をクマの首に装着。ビデオ撮影とあわせて、クマの血流と体重をモニターした。
その結果、9頭のうち5頭が体重を減らし、うち4頭は1日あたり2.9~5.5ポンド(1.3~2.5キロ)の体重を減らしたことがわかった。調査対象となったホッキョクグマの平均体重は約386ポンド(175キロ)。ある1頭のクマに至っては、わずか9日間で51ポンド(23キロ)もの体重を減らした。
「これは驚くべきレベルの体重減です」そう述べたのは、アメリカ地質調査所(USGS)の野生生物学者アンソニー・パガーノ氏。彼はこの木曜日発行の「サイエンス」誌に掲載された新研究の代表執筆者だ。
研究者たちは、4月に10日間にわたってホッキョクグマの調査を行った。クマたちは、このあと子グマを産み、子育てをし、厳しい冬を生き延びるものと考えられる。しかし、氷の被覆が縮小しているため、クマが狩りのシーズンにアザラシの子供を狩ることが困難になりつつある。ホッキョクグマは、アメリカ合衆国魚類野生生物局が発表する絶滅危惧種のリストに入っている。
ホッキョクグマの狩りには海上の氷が欠かせない。クマたちは獲物のアザラシが呼吸のために時おり氷の穴から飛びしてくるのを氷上で待ちうける。また、クマはアザラシの後を追って泳ぐこともある。海上の氷が少なく、散り散りになっているところでは、クマはより長い距離を移動しなければならない。それはつまり、多くの場合、海中を泳がなければならないことを意味する。クマは泳ぐことによってより多くのエネルギーを消費し、低体温症や死亡のリスクが高まるなど、深刻な結果がもたらされる。これはアルバータ大学の生物学教授アンドリュー・デロチャー氏が彼自身の研究の一部で述べていることだ(なお、「サイエンス」掲載の今回の新研究には、デロチャー氏は加わっていない)。
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