「銃規制法を」立ち上がる高校生たち 無策の政治家に圧力 フロリダ銃乱射

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 銃暴力統計サイト『ガン・バイオレンス・アーカイブ』によると2018年度、アメリカ国内では2月21日時点で銃による事件が7,643件発生しており、死者数は2,107人に上っている。

 統計にはもちろん、2月14日に米南部フロリダ州の高校で起きた銃乱射事件の被害者も含まれている。そして、元在校生の容疑者(19歳)がAR-15型ライフルを乱射して生徒や職員17人を殺害したこの事件を機に、アメリカ人、特に子供たちの「堪忍袋の尾」が切れたようだ。事件が発生したフロリダ州では、特に高校生を中心に銃規制を求める運動が大きな盛り上がりを見せている。

◆トランプ大統領のツイートが炎上
 ドナルド・トランプ米大統領は事件後の17日、ツイッターに「FBI(米連邦捜査局)がフロリダの高校銃乱射事件容疑者が発していたシグナルを見逃したことは遺憾だ。これは受け入れられない。(FBIは)トランプ陣営のロシア共謀疑惑捜査に時間を費やし過ぎている。共謀などなかった。基本に戻って我々を誇らしく思わせてくれ」と投稿。FBIに責任転嫁をしていると大きな批判を浴びた。

 2017年2月28日のNBCニュースの記事によると、トランプ氏は精神疾患患者による銃入手を困難にしたオバマ前大統領時代の法を廃止する法案に署名している。もし銃乱射事件が精神疾患の問題であるならば、責任の一端がトランプ氏にもあることを国民の多くは理解しているはずだ。

◆銃規制法要求に立ち上がる高校生
 銃乱射事件後に何の措置も取らず、事件をFBIの責任にしてロシア疑惑捜査を攻撃するトランプ氏のツイートは、被害校の生徒たちの神経を逆なでしたようだ。

 2月19日付 CNNの報道によると、同日首都ワシントンDCで、高校生と銃規制法支持グループがホワイトハウス前で寝転ぶ抗議行動を実施。またCNNの21日付記事によると、同日フロリダ州各地とミネソタ州ミネアポリス、イリノイ州などの高校で「ウォークアウト」と呼ばれる授業ボイコットが起きた。フロリダ州では高校生たちが州議事堂に集結し、「投票で(共和党政治家を)追放しろ」などと声を上げているという。

◆追い詰められる共和党政治家たち
 同州のテレビ局WTSP電子版の18日付記事によると、全米ライフル協会(NRA)から300万ドルの献金を受けたというフロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員(共和党)も矢面に立たされている。同州にはトラックの側面を利用した「学校で虐殺された」「なのに、まだ銃規制がない?」「なぜだ、マルコ・ルビオ?」と書かれた赤いビルボード3つが並べられた。

 ルビオ氏を始め、NRAから多額の献金を受けている政治家たちは銃規制を渋っている。しかし今回の事件で立ち上がった高校生や一般市民の声を無視すれば、今後の政治生命が脅かされる結果にもなりそうだ。

 トランプ大統領はそれを察知したのか、20日にツイッターで「共和党でも民主党でも、私たちは今(銃購入時の)身元調査に力を入れなければならない」と述べた。どうやらトランプ氏は戦略を変え、NRAを怒らせない程度の銃規制を行う提案をすることを目指すようである。

 20日に公表されたクイニピアック大学による世論調査によると、現在アメリカの有権者の66%が「より厳しい銃規制法施行に賛成」しているという。トランプ大統領、そして共和党の銃規制に対する今後の対応次第では、2018年に共和党政治家の多くが落選する事態に発展する可能性もありそうだ。

Text by 川島 実佳