「IQOSのほうが安全」と謳うには証拠不足 米当局が見解発表

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 タバコ大手、フィリップモリス社の加熱式タバコIQOSは、世界30ヶ国以上で販売されているが、アメリカでは認可されていない。フィリップモリス社は、IQOSは従来のタバコより安全だと主張しているが、そのうたい文句の妥当性を議論した米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会では、根拠が不十分という意見が多数を占めた。若年層の喫煙につながる可能性も指摘されており、認可をめぐっては慎重な意見がある。

◆リスクは低下。しかし安全とは言えない
 IQOSは、「ヒートスティック」と呼ばれる圧縮されたタバコの葉の塊をホルダーに挿入し、火を使わず葉を温め、ニコチンを含むエアロゾルを発生させるシステムだ。タバコを燃焼させると有害物質が発生し、これが健康被害につながる。しかし燃やさないIQOSの場合は、有害物質は市場に流通する平均的な紙巻きタバコに比べ、69%から99.9%も低減するとロサンゼルス・タイムズ紙(LAT)は解説している。また、ニコチンを含む液体を温める電子タバコとは違い、タバコのテイストと「吸った感」が味わえるのが魅力だという。

                                                                                                                 

 LATによれば、全米の喫煙者は約4200万人だ。フィリップモリス社は、IQOSが販売されれば、600万人の喫煙者がIQOSに切り替えると推定しており、20年間で9万人の命が救われるとしている(ウェブ誌『Vox』)。

 諮問委員会の9人のうち8人のメンバーは、「有害、または有害な可能性のある物質に人体がさらされることを大幅に減らす」という部分では、フィリップモリス社の主張に賛成した。しかし「完全にIQOSに切り替えることは、従来のタバコを吸い続けるのに比べ、健康被害が少なくなることを示す」という主張に対しては、5対4で反対多数となった。つまり、リスクは減りそうだが、これまでのタバコより安全と言うには、十分な証拠がないという見解だ。

◆禁煙の流れに逆行?若年層への影響を懸念
 反喫煙で有名な、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のスタントン・グランツ氏は、フィリップモリス社がFDAに提出した資料には、IQOS が健康への影響という点で従来のたばこより優れているという根拠は示されていないと述べる。タバコ業界は、常に「ライト」、「マイルド」、「低タール」などのセールストークを危険な商品に表示しており、今回も同じことの繰り返しだと切り捨てた(NPR)。

 Voxは、タバコの代替品の国民の健康への長期的影響は分からないと述べ、現在の喫煙者の命は救えても、若い喫煙者を増やす可能性もあると述べる。反タバコ運動団体「キャンペーン・フォー・タバコフリー・キッズ」の会長マシュー・マイヤー氏も、IQOSが本来タバコを吸わない若者を取り込み、喫煙を減らす取り組みに逆行することを懸念している。同氏はまた、8人の諮問委員が、多くのスモーカーがIQOSと紙巻きたばこ両方を吸うようになると予想したことを上げ、そうなればIQOSの公衆衛生上の最終的恩恵はなくなるのではないかとも述べている(LAT)。

◆日英はドライ?リスクは買い手が負担を
 批判に対しフィリップモリス社は、IQOSに危険がないわけではないことを顧客に伝える用意があると述べた。タバコをやめられない、またはやめない喫煙者の健康の見通しを改善するための商品として位置づけることで、アピールしていきたいとしている(LAT)。

 すでにIQOSが販売されているイギリスや日本の公衆衛生機関では、タバコについては「リスクを減らす」というアイデアが受け入れられているとLATは述べる。喫煙者により害の少ないものを提供するため、新しい喫煙者が増える可能性も受け入れたとしている。

 元FDAの次長、マーク・シーンソン氏は、これらの国々では「買い手がリスクを負う」というアプローチで、消費者に不確実な状況下で選択することを促していると述べる。同氏は、FDA諮問委員会の専門家たちがフィリップモリス社の調査結果に十分納得できなかったのは分かるとしながらも、トランプ政権の規制バリアを減らす傾向が、IQOS認可におけるFDAの最終決定に影響を及ぼす可能性もあると見ている(LAT)。

Text by 山川 真智子

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