深刻な中東欧の人口減 50年までに10国が15%以上減 存続危ぶまれる国も

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◆人口大流出。仕事を求めて国外へ
 最も急速に人口が減ると予測されているのはブルガリアで、2017年には700万人であった人口が、2050年には540万人まで減ると見られている。率にして、23%の減少だ。エコノミスト誌によれば、人口減少は地方のほうが深刻で、なかでも最悪なのは北西部だという。以前は産業の中心地であったヴラツァの町では、毎年2000人の人口減となっており、人材もいなければ仕事もない。市長は、投資や国の補助がなければ、10年後には町は消滅すると述べている。

 ブルガリアは人口減の最も極端なケースだという。同国にとって共産主義からの移行は衝撃的なもので遅々として進まなかった。1990年代には出生率が急落し、数十万人の若者が、豊かで安定した西欧に向かったため、年配者とスキルの無い者ばかりが残った。その結果、急速に高齢化し、年金生活者の60%が政府の貧困ライン以下で生活しているという。経済学者のGeorgi Angelov氏は、富裕国に見られる少子高齢化が、貧しいブルガリアで起こっていると述べている(エコノミスト誌)。

 ブルガリアに次いで人口が減るとされているのはラトビアで、2017年には190万人だった人口は、2050年には22%減の150万人になると予想されている。政治誌『ポリティコ』に寄稿した歴史家でジャーナリストのゴードン・F・サンダー氏によれば、EU加盟以来、人口の5分の1が職を求めてイギリス、アイルランド、ドイツに出て行ったという。ラトビアの賃金が低いことに加え、NATOとロシアが戦争になれば最前線になるという地理的事情も、出国する人を引き止められない理由だという。サンダー氏がインタビューしたラトビアの外交官は、このままでは将来の兵士も、納税者も十分確保できないとし、国家としての存続も危ぶまれると述べている。

◆移民受け入れが選択肢。だが、解決策にはならない
 クオーツは、2016年の欧州全体の人口増は、移民によるものだと述べ、出生数と死亡数はほぼ変わらなかったが、移民が人口を150万人増やしたとする。同誌は、人口減に悩む中東欧諸国の解決策は移民受け入れだが、これらの国々では激しい抵抗があると述べる。特に難民には厳しく、ほとんどが受け入れようとしないとしている。

 一方、エコノミスト誌によれば、近年景気の良いブルガリアのソフィアなどでは、ウクライナやモルドバなど近隣国からの労働者を受け入れているという。一部の経済が好調な国では、わずかながら人口の流入が見られ、国外へ出た人々の帰国も増えているといった明るい話もあるようだ。

 とは言え、出生率が低いため、多少の移民や帰国者の増加では人口減の歯止めにはならないとエコノミスト誌は述べる。クオーツも、移民がこの先の人口減を和らげることはできるが、状況を逆転させることにはなりそうもないと述べる。同誌によれば、難民危機の際、大量の難民を受け入れたドイツでさえも、たとえ100万人の移民を受け入れたとしても、迫りくる人口動態的衰退は避けられないと研究者は指摘している。

 人口問題という時限爆弾を抱えてしまった中東欧諸国。背景は違うが、日本も同じ状況にあるだけに、今後の各国の動向に注目したい。

Text by 山川 真智子