8割超が「トランプ大統領の北への武力行使」を予想 先制攻撃の考え方は慎重 米世論
加速する北朝鮮のミサイル開発を前に、アメリカでは先制攻撃の是非をめぐる議論が熱を帯びている。米シンクタンク「ピュー研究所」が11月28日に発表した世論調査の結果によると、潜在的な脅威となる国への先制攻撃について「非常に」または「ある程度」正当化できると回答したアメリカ国民は、約半数に上った。また、同機関の11月3日発表のレポートでは、北朝鮮の脅威を感じている人の割合が過去4年間で15ポイント以上増えたことが明らかになった。
◆先制攻撃への意見拮抗 ただし肯定派は減少傾向
この世論調査は10月末、アメリカ全域の1504名の成人を対象に行われた。設問の一つとして、アメリカへの深刻な脅威となり得るがまだ攻撃を行っていない国に対し、軍事力の行使が正当化されるかが問われた。ピュー研究所の記事によると、「全く正当化できない」「あまり正当化できない」と答えた人の割合が48%だったのに対し、「ある程度正当化できる」「非常に正当化できる」との回答は50%となった。世論はほぼ半分に割れた形だ。
ワシントン・ポスト紙(11月29日)ではこの結果について、「しかしながら、世論は以前より冷静である」と述べ、先制攻撃への肯定派が減少傾向にあるという認識を示している。記事では2009年の調査と比較し、肯定派の割合が2ポイント減少したと指摘する。無回答者が減少し、否定派の割合は7ポイントの上昇を見せた。特に民主党寄りの有権者に限ると、否定派の割合は2009年の48%から61%へと顕著に増加しているようだ。
◆数字が語る核攻撃への危機感
同調査ではまた、核の脅威をアメリカが真剣に受け止めるべきだと考える人が71%と多数派を占めることが分かった。さらに、北朝鮮がアメリカに核ミサイルを到達させる能力があると考える人は64%に上る。北朝鮮が実際にそうした攻撃を行う意思があると捉えている人は65%であった。2013年の調査からそれぞれ15ポイント以上の増加となっており、アメリカ国民の間で核攻撃への意識が高まっている。
このうち北朝鮮の攻撃意思に関する質問では、前回調査時には政党間で18ポイントの開きがあったのに対し、今回はどちらの政党支持者も肯定的回答が増加し、差は1ポイントにまで縮まった。核ミサイル開発を受け、国民の間で北朝鮮の脅威が共通認識となったことが伺える。
◆8割が軍事力行使を予期
北朝鮮に対し、アメリカは軍事力を行使するだろうか? 調査結果によると、実に84%のアメリカ国民は、トランプ米大統領に本当に軍事力行使の意思があると考えているようだ。
しかし、現政権が実際に北朝鮮に対処できると考える割合は39%に留まる。支持政党による違いも目立ち、約8割の共和党支持者が肯定的な見通しを示したのに対し、民主党支持者間ではその割合は1割にも満たない。
ワシントン・ポスト紙は、今回のような世論調査の意義を強調する。先制攻撃に反対する世論が高まれば、議会や軍は大統領命令を制限する枠組み作りに動く可能性があるという。仮に攻撃命令が出された場合にも、命令に違法性があるものと見なすことができれば、その実行を拒否できるという考え方もあるようだ。