「日本への移住が簡単に」“開国”に海外の注目集まるも、高度人材からは厳しい見方

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「外国人労働者」「移民」と言うと、日本人が敬遠する低賃金で肉体的にきつい職場での受け入れをイメージする人が多いかもしれない。しかし、急激な少子高齢化により、研究者、技術者、ビジネス・エキスパートといった「高度人材」も、近い将来大幅に不足すると見られている。

 危機感を持つ政府は、海外から高度人材の受け入れを拡大するため、ポイント制による優遇措置を打ち出している。さらに今年4月から「日本版高度外国人材グリーンカード」を創設し、最短在留期間1年で永住権を獲得できるようにするなど、少しずつ門戸を広げている。その一方で、日本は依然として高度外国人材にとってアジアで最も魅力が薄いとする調査結果も出ている。明暗両面あるのもの、日本の“開国”の動きに海外メディアの注目が集まっているのは確かなようだ。

◆「日本では死ねない」永住を阻む過酷な相続税
 20日にスイスのビジネススクールIMDが発表した2017年版「世界人材ランキング」によれば、調査対象のアジア11ヶ国中、日本は高度外国人材にとって最も魅力がないという結果になった。世界でも63ヶ国中51位と振るわず、この調査結果を報じたブルームバーグは、「人工知能やロボットを活用した『第4次産業革命』が進む中、先端分野の人材確保はますます難しくなりそうだ」と警告する。

 日本に高度外国人材が集まりにくい理由は、「言語の壁」(英語が通じにくく、日本語の習得は難しい)と、グローバルスタンダードとかけ離れた「独特で強固な商習慣」だと言われてきた。これに加え、近年指摘されるようになったのが、相続税の高さだ。経済活性化のため相続税自体を廃止する国も多い中、日本の55%は世界最高水準。さらに、外国籍であっても死亡時に日本国内に住所があれば海外保有資産も課税対象となるという、異例の過酷さだ。

 ブルームバーグは、この日本の税制を「この国では死ねない」という見出しで紹介している。国際銀行協会(IBA)のポール・ハンター事務局長は、記事内で「日本は外国人の長期在住を望んでいないというメッセージを発しているようなものだ。優秀な人材の来日を踏みとどまらせるだけでなく、経験を積んで日本経済に貢献しようとするベテラン外国人を追い出す結果にもつながっている」と強く批判している。日本政府はこの春から、外国人の相続税納税義務発生条件を滞在10年以上に緩和したが、外国人の目からは依然として日本滞在を阻む高い壁と映っているようだ。

◆「若さ」「日本語力」「年収」などが鍵
 一方、ビジネスメディア『クォーツ』は、「もし、あなたが高度人材であれば、日本への移住は比較的簡単だ」としている。ポイント制を軸とした日本の新たな制度は、永住者数の上限を設けていないことや最短1年で永住権を取得できる点で、「アメリカとカナダよりオープンだ」と言う。

「高度人材ポイント制」とは、滞在中の活動を研究職による「高度学術研究活動」、技術職による「高度専門・技術活動」、ビジネスパーソンによる「高度経営、管理活動」に分け、年齢、学位、職歴などの条件に応じてポイントを与えるというもの。累積ポイントが70点以上に達すると、永住権取得条件の緩和など出入国管理上の優遇措置が与えられる。

 クォーツは、日本移住を検討している読者に向け、高ポイントが与えられる条件を例示している。一つ目は「若さ」で、「20代ならば15ポイントもらえる。これは、特許を持っている、職歴7年、日本語力があるといったことと同等の武器となる」と紹介。「職歴の長さ」では、ビジネスキャリア10年以上で25ポイントとなり、「日本語力」では、日本語能力試験合格で15ポイント、「年収の多さ」では、800万〜1000万円で30〜40ポイントなどと紹介している。

◆人材不足が懸念される今が日本移住のチャンス
 ブルームバーグは、日本が近い将来特に必要とするのは、ビッグデータ、人工知能、IoT(モノのインターネット)といった最先端IT分野に関わる人材だとしている。2020年にはこれらの人材が4万8000人不足するという予測と共に、情報セキュリティの分野では20万人もの人材不足が見込まれるという。

 IMDのシニアエコノミスト、ホセ・キャバレロ氏は、「短期的には大きな問題ではないかもしれない。しかし、高齢化と共にこの傾向が続くと大きな問題になるだろう。自国の人材だけで、彼らが必要とする技術開発ができるだろうか?」と、ブルームバーグに語っている。IMDの最新の調査によれば、日本のデジタル分野での競争力は世界で27位、ビジネスの意思決定におけるビッグデータとアナリティクスの活用では既に最下位に近い。

 そうした懸念の一方で、世界展開する米家庭誌リーダーズ・ダイジェスト(web版)が、「日本への移住がこれまでで最も簡単に」と新たな制度を紹介するなど、海外の一般層への周知も少しずつ進んではいるようだ。同誌は、「永住権を得るのに必要だった従来の10年の滞在期間が、ポイントを貯めれば半分になる」と紹介。今が観光客に人気の日本に永住するチャンスだと、軽いタッチの記事で読者の背中を押している。

Text by 内村浩介

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