ホロコースト生存者にバーチャル・インタビューできる展示物 「歴史をより身近に」

Bebeto Matthews / AP Photo

【ニューヨーク・AP通信】 「ナチスの強制収容所はどんな所でしたか?」「どうやって生き延びたのですか?」「その経験は、その後のあなたの人生にどのような影響を与えましたか?」

 新技術によって、来館者は、ここに挙げた質問や、さらに多くの別の質問を投げかけてバーチャル・インタビューを体験できる。インタビューの相手は、実際のホロコースト生存者だ。この展示は、強制収容所やゲットーを生き延びた、あるいはナチスの支配下で密かに生き延びた人々のうち、今もまだ存命中のユダヤ人およそ10万人が、いつかこの世を去り、もはや自分自身の口から答えを発することができなくなる日に備えての試みである。

 ニューヨーク市のユダヤ遺産博物館の展示「証言の新次元」は、何時間にもわたって録画された高画質ビデオと音声認識技術を使い、アンネ・フランク氏の義理の妹のエヴァ・シュロス氏、そしてその知人にあたるホロコースト生存者のピンチャス・ガター氏に向けてのバーチャル・インタビューの機会を創り出している。

「我々が発見したのは、この手法によって、歴史が個人にとってさらに身近なものになるということです」。この展示のコンセプトデザイナーのヘザー・スミス氏はそのように語る。「展示の体験者は、映画を見たり教科書を読んだり講義を聞いたりする従来の方法とはまた違ったやり方で、歴史に触れることができます」。

 このプロジェクトは、ナチス時代の生存者約52,000人へのインタビューを記録したショア財団(スティーブン・スピルバーグ氏創設)と創造技術研究所との共同プロジェクトだ。2つの組織はともに、南カリフォルニア大学に拠点を置いている。2009年に最初に考案されて以来、他のいくつもの美術館において様々な別の形式をとりながら続いてきたこの展示。そこでは新技術を用いて、危険きわまりないアドルフ・ヒトラーの第三帝国時代の「前」「その渦中」「その後」の、3つの時期の生活に関わる質問への回答を引き出すことができる。

 著名なアンネ・フランク氏と同様、シュロス氏とその家族はアムステルダムで潜伏生活を送っていたが、やがて密告を受け、アウシュヴィッツに送られた。彼女は最終的に、1945年にロシア軍によって解放された。1953年に、シュロス氏の母親はアンネ・フランク氏の父であるオットー・フランク氏と結婚。今では88歳になったシュロス氏は、現在はロンドン在住。彼女は自分自身の体験を、これまで学校の子供たちに直接話したり、「エヴァの時代―アウシュヴィッツを生きた少女」をはじめとする書籍の中で語ったりしてきた。

「アンネは本当に聡明な少女でした」。アンネ・フランク氏についての質問を受けて、潜伏生活に入る前、子供時代のアンネと交友のあったシュロス氏が画面上から答えを返す。

 バーチャル・シュロス氏とバーチャル・ガター氏は、ともに赤い椅子に座り、大きなフラットモニターから語りかけてくる。

 モニター上のバーチャル・ガター氏は、「あなたは何の仕事をしていますか?」との質問を、先週、来場者から受けた。実際のガター氏は、現在85歳。カナダのトロントに住んでいる。「私は今ではもう退職しています」とバーチャル・ガター氏は答えた。「私は多くのコミュニティ活動に関わっています。シナゴーグで聖歌を歌っていますし、病院の入院患者たちを訪問したりもします……基本的に私は、ボランティアとして地域社会の仕事をしています」。

 ナチスの「死の行進」について聞かれると、彼は次のように答えた。「私たちは2週間半にわたって行進しました。私たちのうち半分だけが、テレージエンシュタットに到着しました。残りの半分は、道の途中で死んだり、殺されたりしました」。

 このバーチャル・ガター氏は、求められれば、ユダヤ教の礼拝歌を歌ったり、イディッシュ語の冗談を言ったりもできる。

 コンセプトデザイナーのスミス氏によると、現時点では、バーチャル・シュロス氏よりもバーチャル・ガター氏の方が、質問に答える能力は高いという。その理由は、前者のデータベースには9,000パターンの質問がインプットされているのに対し、後者は20,000パターンだからだ。しかしスミス氏は、バーチャル・シュロス氏の方も、今後より多くの質問を受けることによって向上していくだろうと述べている。

 将来的には、現在開発が進んでいるホログラフィー技術も取り入れた、さらに多様な形態でこの展示を行うことが可能になるとスミス氏は述べた。

「たくさんの子供たちを集めた教室や、ひとりの子供、ひとりの大人だけを入れた本物の部屋に、ホロコースト生存者を対面して座らせる……というのが最終的なビジョンです。そこにいる体験者に、できるだけ本物のように感じてもらいたいのです」。

 ワルシャワにあるポーランド・ユダヤ人歴史博物館の館長を務めるバーバラ・キルシェンブラット=ギンブレット氏も、この展示を実際に体験した。その上で彼女は、今後技術がさらに進んだとしても、そのことでホロコースト生存者自身の存在感が目減りすることはないという希望を持っている。

「どれだけ革新的な技術であっても、実際の経験に取って代わることは無理です。また、そのようなことがあってはならないと思っています」。キルシェンブラット=ギンブレット氏は言う。「この展示の素晴らしいところは、本物のホロコースト生存者こそが展示の前面であり中心であるという点です。彼らはとても魅力的であり、彼らの語る言葉には、非常に強い力があります」。

By KAREN MATTHEWS
Translated by Conyac

Text by AP

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