日本の学校給食、「当たり前のこと」に感心する海外 制度自体が優れている?
小中学校時代の思い出として、おいしい給食を挙げる人も多いのではないだろうか。ある意味で当たり前だった毎日の習慣だが、長寿の国・日本を支えるシステムとして海外で評価が高まっているようだ。
◆長寿健康国を支える「食育」
日本食は健康的だとして世界でブームになっており、日本人の食習慣のスタート地点でもある給食に脚光が当たっている。米ビジネス・インサイダー誌では、日本では「食育」という概念があることを紹介する。主菜、副菜、汁物などバランスの取れた給食メニューを写真入りで掲載しており、健康的な食べ物を選択することが、その日の体調と思考はもとより人生のレベルでも変化をもたらすとしている。こうして健康的な食習慣を早くから身につけるからこそ、世界的な長寿が実現し、肥満率も世界平均を遥かに下回っていると分析している。
米ワシントン・ポスト紙は、家庭への好影響に注目する。子供たちは給食でおいしいと感じたメニューを家庭で話題にし、また食べたいとリクエストする。こうして家庭でも給食と同じ献立を食べる機会が出てくることを評価している。ある地方自治体では給食メニューのフルカラーの料理本まで出しているようで、家庭でも好評な様子が伺える。給食は、子供はもとより大人にも波及し、健康で長寿の国の一端を支えていると海外は見ているようだ。
◆日本の給食、他にもこんなところがユニーク
給食といえば栄養バランスの良さが大きなメリットだが、それに加えて、海外のメディアは意外な特徴に注目している。豪公共放送のSBSは、栄養士であるシャーリーン・グロス氏が日本への視察旅行中に驚いたポイントを紹介する。氏が感嘆したのは、現場に調理師が配置され、温かい食事が提供されている点だ。給食室から漂う美味しい匂いは日本人にとっては当たり前だが、校内に調理室のない海外からは優れたシステムとして見られているようだ。
給食のシステムに感心するのは、アメリカのビジネス・インサイダー誌も同様だ。同誌では給食当番が教室への運び入れと盛り付けをする点に着目している。アメリカではスタッフが行うのが一般的なようで、何でも自分たちでやる文化が育まれていると高評価だ。また、各自散り散りではなく、机を寄せ合って班ごとに食べる習慣についても、食事のマナーが身につく良い方法だとしている。日本では当たり前になった給食制度だが、世界的な好例として評価されているようだ。
◆海外の学校での昼食はどうなっているのか?
気になるのは海外での学校での食事だが、一例として、アメリカの食事事情はそれほど充実していないようだ。米シティ・ラボ誌によると、加工食品や再加熱して出すだけの料理が主になっているようだ。ミシェル・オバマ大統領夫人による給食改善への取り組みも行われたが、利権絡みで法案成立が危ぶまれており、現トランプ政権は逆に塩分を増やすことや全粒穀物を減らすことに賛成する考えのようだ。
米ビジネス・インサイダー誌でも、日本の給食を「健康を害するものではない。原料は地元で作られ、ほとんど冷凍されない。肉に疑念の余地がない」としている。裏を返せば、アメリカの学校給食はあまり健康とは言えないようだ。また、日本の小中学校には自販機がなく、食べ物の持ち込みもほぼないことに触れている。アメリカでは持ち込みが許可されていることが伺われ、自由さと引き換えに粗食の懸念があるようだ。構内のカフェテリアでは揚げ物や糖分過多の食事も販売されているとのことで、前述の給食改善の試みが成功したとしても、生徒は結局揚げ物を選んでしまいがちなのかもしれない。
当たり前に思ってきた給食制度だが、諸外国と比較するとその良さに気づかされる。健康で長寿な人生のスタート地点として、海外の視線が集まっているようだ。