「お金で幸せが買える」と判明 効果はあるが選ばれていないその使いみちとは?

doyata / shutterstock.com

「お金で幸せは買えるか?」という永遠のテーマに、一つの答えが出たようだ。米国科学アカデミー紀要に掲載された論文によると、お金を使って日々の雑用をアウトソースすることで日々の幸福度が有意にアップするという。別の論文でも収入と幸福度の相関が指摘されており、「お金で幸せは買える」というのが科学者たちの答えのようだ。

◆「時間節約サービス」の利用で、現代人をむしばむ「時間飢餓」から解放されよう
 CNNによると、米ハーバード大学の社会心理学者のウィリアンズ氏が主導したこの研究では、食品配達、清掃、ライドシェアのウーバーなど、ちょっとした出費で雑用を依頼できるサービスを「時間節約サービス」と呼んでいる。欧米4ヶ国の6000人への調査の結果、所得水準にかかわらず、時間節約サービスに費やすお金と人生の幸福度は相関性があることが分かった。

 現代人は時間的ゆとりのない「時間飢饉(time famine)」の状態にあり、雑用から解放されることで幸福度が増す。結果としてお金で幸福を得られるという寸法だ。例えば1時間の家の掃除であれば、最低25米ドルほどから依頼でき、決して裕福な人だけの選択肢というわけではなさそうだ。

 ワシントンポスト紙も同じ研究を取り上げており、結局は別の雑用でゆとり時間は消えてしまうのでは? と、やや懐疑的な見方も示しているが、サンフランシスコ州立大学教授の「(研究は)“堅実”かつ“印象的”」(7月24日)との賛辞を紹介するなど、一定の評価を与えているようだ。

◆効果的な時間節約サービスだが、普及には壁も
 ただし、時間節約サービスは、お金の使い道として選ばれていないのが現状だ。CNNによると、バンクーバーでの「もし40ドルもらえたら」とのアンケートにおいて、時間節約サービスに類する使い道を挙げた回答者はわずか2%だった。一方、ワシントンポスト紙は同じバンクーバーで実際に40ドルを手渡し、人々に「モノの購入」と「時間節約サービスの利用」のいずれかを指定して使ってもらった。結果、後者の方がストレスが軽減され、ポジティブな効果が見られたとのことだ。効果はあるが選ばれていないという現状が浮き彫りになった。

 CNNは原因として、赤の他人に雑用を頼むことに罪悪感があることを挙げる。一方のワシントンポスト紙は、人間は時間の見通しを立てるのが下手で、明日は今日より時間があると思ってしまうことがサービスの申し込みを阻んでいる、との見方だ。他にも同紙は、目に見えない時間的余裕にお金を払うため効果が実感しづらいのでは、と見る。意識して利用することが幸福度向上への第一歩なのかもしれない。

◆幸せのラインは年収840万円?
「時間節約サービス」以外にも、お金で幸せを手に入れる手段はさまざまだ。タイム誌は「幸せになるには7万5000米ドル(約840万円)の年収が必要?」とストレートな記事を組んでいる。調査によると、この金額までは年収と幸福度に相関があるとのことで、まずは直球で年収を増やすことが幸せの秘訣という視点だ。ちなみに低収入自体が不幸なことではないが、生活上の小さな問題をより深刻に感じがちな場合があるという。

 米ウェブサイトの『Mic』も同じ調査に触れている。アメリカの家庭の収入の中央値が7万5000米ドルよりも大幅に少ない5万6500米ドルであることを示した上で、収入額よりも、使い道に気を配るよう勧める。例えばモノよりもスキー休暇などのアクティビティや、友人のためにお金を使い、同じ額でより幸福を実感しようというアプローチだ。

 お金と幸福にまつわる方法論はさまざまだ。使い道に少し気を配るだけでも幸せはぐっと身近になるに違いない。

Text by 青葉やまと